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短編No96 誰が殺した?

 
作者:スレ汚し
掲載日時:2008/02/19(火) 10:06:24
ネギま! バトルロワイヤル


小屋があった。
身を潜めるには調度良い環境だった。
そこには既に4人がいた。
4人はプログラムの参加者だった。
だが、息をしているのは3人だった。
1人は血を吐いて倒れていた。
そして動かなかった。

「私のせいだ‥」
3人の内の1人が言った。
「私がこのかを殺したんだ‥」
3人の内の1人は、めっきり冷たくなったそれを見て言った。
声は震えていた。
「桜子、あんたのせいじゃない‥。このかを殺したのは‥私よ」
3人の内のもう1人はめっきり冷たくなったそれを見て言った。
声は震えていた。
「違うよ‥美砂。私がこのかを‥」
3人の内の最後の1人はめっきり冷たくなったそれを見て言った。
声は震えていた。
「「円のせいじゃない‥。」」
3人の内の2人は言った。


彼女達はプログラムに参加していた。
プログラムとは、無作為に選んだ日本の中学3年生の1クラスに、殺し合いをさせるというものだった。終了条件は最後の1人になるまで。
今回の対称は彼女達のクラスだった。

3人は親友だった。
いつも一緒にいる程、仲は良かった。
だから、プログラムも3人一緒に


行動した。

殺し合いの会場となった離島には、もともと住人がいた。
主催者側に強制的に退去を命じられていたが、彼らが残した人工物は健在だった。
故に3人は森の中に小屋を見つけることが出来た。
誰が何のために建てたかは分からなかったが、誰も気にしなかった。
一通り安全を確かめてから、土足で屋内に上がり、3人は一息ついた。
「ふー‥」
「どうする?これから」
「どうするって‥」
椅子も机も無かったため、仕方無く行儀悪く床に座った。
肩から降ろしたデイパックの中から、各々の支給武器を取り出した。

1人目の武器は拳銃だった。
初心者にも扱い易い型で、使い方さえ覚えれば、強力な護身道具となった。

2人目の武器は拳銃だった。
初心者にも扱い易い型で、使い方さえ覚えれば、強力な護身道具となった。

3人目の武器は拳銃だった。
初心者にも扱い易い型で、使い方さえ覚えれば、強力な護身道具となった。

手にしたそれらを複雑な心境で3人は見ていた。
「ねぇ‥」
1人が言った。
「これ‥"使った"?」
2人は首を地面と平行に振った。
「だったらさー‥1回使ってみない?」
「ここで?」
「そう、ここで」



本人が言うには、1度は使用しておかないと、いざと言う時に役に立たない、とのことだった。
何となくそれが正論に聞こえた2人は、素直に賛成することにした。
「あれを的にしようよ」
もう1人が指を差した。
その先には、奥の部屋に続く開けたままの扉に、糸を巻き付けぶら下がる大きな蜘蛛がいた。
もう1人が言うには、さっきまではいなかったけど、少し目を放したら現われていたらしい。
確かに派手な模様と適度な大きさが、的としての役目を果たしてくれそうだった。
何となくそれが正論に聞こえた2人は、素直に賛成することにした。
「じゃあ一斉に撃った方が良くない?」
最後の1人は、何発も銃声が響いたら、自分達の居場所を特定させることになると主張した。
同時に撃てば、銃声が重なり目立たないと言うのだ。
何となくそれが正論に聞こえた2人は、素直に賛成することにした。

3人が横1列に並んだ。
穴が開く程読んだ取扱説明書通りに弾を装填させ、安全装置を外した。
ゆっくりと銃を構える姿は、チアリーディングのフォーメーションのように、3人揃っていた。
「「「せーの」」」



誰が音頭を取るかは決めていなかった。だが、この3人にそんな課程は不要だった。
息を合わせ、全く同じタイミングで引き金を引く。


(そう言えば)
(誰か奥の部屋)
(様子見に行ったっけ?)


パァァァン

異なる銃口から飛び出した3発の弾丸は、全て命中した。
奥の部屋から顔を出した近衛木乃香に。
先客としてこの小屋に来ていた近衛木乃香に。
何も知らずにこちらに来てしまった近衛木乃香に。


不運にも犠牲になる筈だった蜘蛛は幸運にも助かり、いつの間にかどこかにいなくなっていた。



「やっぱり私が殺したんだよ!私が試し撃ちしよう、なんて言ったから‥」
「それを言ったら、私があんなのを的にしよう、なんて言わなきゃ‥」
「1発なら、まだ死ななかったかもしれない‥。同時に撃とう、って言った私の責任よ!」
3人は共通の罪悪感に悩んだ。
誰のせいとも言い難いが、現に人が1人死んでしまった。
しかも被害者には何の罪も無く、3人には何の殺意も無かった。
この言葉1つで片付けるのも難だが、"偶然"の出来事だった。

「私が殺したのよ!」
「私が悪いの!」
「私のせいよ!」


どんなものも、いつも仲良く3人で分け合っていたが、こればっかりはそう簡単に済む問題では無かった。
かれこれ数十分も、彼女達は互いの罪の庇い合いに勤しんでいた。
「二人のせいじゃないよ。だから私が‥」
「悪いのは私だって!」
「違う。私が‥」

その時

「椎名さん。柿崎さん。それに釘宮さんまで」
6つの肩が、一斉に弾んだ。
3人は罪の意識に夢中で、小屋の入口の扉が開いたことに気付かなかったようだった。
そうとも知らずに、やはり土足であがった新たな訪問者は、自分の存在を3人に認識させた。
普段通りのその律義な口調が、理性を保っていることを十二分に表していた。
「「「さ‥桜咲さん」」」
初めて声が聞こえた時は驚愕したが、相手に敵意が無いことが分かると3つの胸をなで下ろした。
「お3方とも、よくぞご無事‥」
話す対称に近付こうと、歩を進めた刹那は、とんでもないものを見てしまった。

「お嬢様ぁぁぁぁぁ!!!!!!」
自分のデイパックを投げ捨て、一目散に木乃香の亡骸に寄り添う。
「このちゃん!!このちゃん!!‥うう」
もう動かなくなったことを確認してしまい、刹那は泣いてしまった。



「そんな‥‥どうして‥‥‥」
刹那にとって木乃香は己の命よりも大事な存在。
それを人並みには理解していた3人は、刹那の心境を汲み、共に涙した。
「ゴメン‥刹那さん‥‥。えぐ‥私が‥‥私がこのかを‥」
「違うの!‥桜子は悪くない‥‥うっ‥悪いのは‥‥私なの」
「刹那さん‥怒るなら‥‥っ‥私だけにして‥2人は‥‥何もしてない‥から」

悲しみの淵にいる当事者に、3方から自分勝手に謝罪する。
森の中の小屋内には、異様な光景が出来上がっていた。



「誰が殺したんだ」
湿っぽい空気が急に終わりを告げた。
明らかに先程までと感じが違う刹那の一声が、殺伐とした雰囲気を呼び出したからだ。
急激な環境の変化に、言葉を忘れ呆然とする3人。互いに顔を見合わせ、困惑していた。
「誰が殺したんだ」
前回よりも声が少し大きくなった分、凄みが増していた。
このまま黙っているのはまずいと判断し、誰が音頭を取るでもなく、3人は同時に、恐る恐る自白した。


「「「わ‥私が‥」」」
「"誰が"お嬢様を殺したんだと言っている!!!!」
刹那は懐に隠し持っていたサバイバルナイフを乱暴に抜刀した。
激怒の念が籠った刀身が、鈍く光った。
「「「ひっ!!」」」
身の危険を感じた3人はそれぞれ自分以外を指差して言った。


「こいつが殺しました!」

〜Fin.〜
 

    [管理人の短編一言感想集] その96
    バトロワらしい考えさせられる短編。
    チアの友情もバトロワの前ではあっさり崩壊してしまうのか・・・・・・。
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
    お問い合わせはyuyu_negirowa@yahoo.co.jpまでお願いします。
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