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短編No87 スキンヘッド物語

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2008/01/20(日) 18:44:23
ネギま! バトルロワイヤル


「まもなく、京都、京都です。」
新幹線の車内アナウンスが流れた。ウチはそれを聞くと隣の桜子を起こした。
「桜子、起きるよ。」
「ううん。」
桜子は寝ぼけ眼でウチを見る。
ウチと桜子はアキラに会いに行く道中だった。
バトルロワイヤル
忌まわしきゲーム、その優勝者のアキラに。

えっ!? じゃあ、ウチと桜子はどうして生きているかって!?
それはジャックされる小型ジェットに乗る前、桜子が体調を崩して、
ウチも少し調子が悪かったので付き添いという形で空港の医務室に駆け込み、土壇場で飛行機に乗らなかったからや。
そのあと何があったかはみんなが想像するとおり。

帰ってきたアキラの願い、出家してみんなの菩提を弔いたい。
最初はウチも含め、みな反対したが、結局アキラの願いを受け入れることにした。
お寺は木乃香のお父さんの紹介だった。ので京都にある。
そして今回、ウチと桜子でアキラがいる寺に訪れることにした。

「亜子、大丈夫!?」
桜子がウチを気遣う、ウチとは違って桜子はラクロス部だからスタミナは桜子の方が上や。ウチ達はいまアキラが居る寺へ向かって山道を歩いている。
だがかなりの山奥でこうして息を切らしながら移動している。また夏場なのでそうとう暑い。
「大丈夫や」
ウチは桜子に言うと再び歩き始めた、本当はしんどいけど、こんなことで弱音は吐けない、死んでいったみんなの為にも。
そして、目的地が見えた。


「「ごめんくださいーー!!」」
ウチと桜子は門の前で呼びかける、すると暫くして人影が見えた。
尼さんの姿をしているが、その目立つ長身は忘れるわけはない。
「亜子、桜子、わざわざこんなところまで来てくれたんだ。」

アキラだった、少し笑ってくれたがどことなく作り笑いのように見えた。
「暑かっただろう、さあ中に入って」
ウチと桜子はアキラの後についてお寺の中に入って縁側のある部屋に通された。
暫くしてアキラが冷たいお茶を持ってきてくれた。
「こんな物しかないけど、よかったら飲んでくれ」

ウチはお茶を飲みつつ一息つく。そしてアキラに話しかける。
「普段はどんな生活をしてるん」
「毎日、みんなの為にお経を読んで、他は僧になるための勉強だ」
「「…………」」

会話が続かない、あの場にいなかったウチや桜子がなにをいっていいのかわからない。
目はアキラの頭に行く、頭巾で隠しているがあの中はスキンヘッドや、
あのウチがみてて見とれた髪はもうなかった。暫く沈黙した後。

「あれーー!? あれって、テレビでよくあるお茶の道具だね!?」
桜子が部屋の端にあった茶道の道具を指す。
「そうなんだ、茶道もここにきて始めたんだ」
これは話題を変えるチャンスや。ウチはアキラに頼む。
「なあ、アキラ、折角だから見せてくれないかな。」
「うん、私も見たい。」
アキラはウチらの要望に少し驚いたが。
「いいよ」
答えてくれた。


ウチはよく分からないけど、アキラの手つきは滞りなかった。お茶を出される。
ウチはそれをとってお茶を飲む。
『うっ、苦あっ』
けど無理をして飲み込む、確かこういうものだから。
「結構なお手前で」
うる覚えの知識を総動員して答える。
そして、桜子の番。桜子は飲んだ瞬間。
「うわっ、にがーーい!!!」

それを聞いた瞬間、桜子に叫んだ。
「あほかーー!! これはそういうものなんや、折角してくれたアキラに失礼やないか!!」
「えーーっ、だってこんなに苦いんだよ。亜子はよく平気だったね」
「ウチも平気じゃないんや、無理して飲んだんや。」
ウチと桜子は言い争いを始める。

「クスクス」
アキラの笑い声がしたので桜子と共にアキラの方を見る。アキラの顔は明らかに作った笑いではなかった、心の底から笑っていた。
ウチらの視線に気づいてアキラは笑いをやめる。
「ごめんなさい、あまりにもおかしかったから、つい。
代わっていなくて安心したよ。亜子や桜子はどうしているのか知りたいな」

それからはさっきまでの空気とはうってかわって事件が起きる前のアキラになっていた。
ウチや桜子はいまの自分達の状況と学園の様子を話した、できたらアキラに帰ってきて欲しいと思いつつ。


そして日も西に傾き始めた頃。
「そろそろ帰らないと危ないよ。」
アキラが言う、確かに山道を今度は降りると言っても人里までかなりの距離がある。
「そうやな、桜子帰ろうか!?」
ウチと桜子は荷物をまとめて帰る準備をする。結局アキラに帰ってきて欲しいと言えなかった。
廊下を歩いて、門の前まで来た。アキラも門の前まで見送りに来てくれた。

「アキラ、また来てもいいよね」
桜子が先にアキラに言う。
「いいやろ、アキラ」
ウチもあとから言う。
「かまわないよ、なにももてなしはできないけど」
そういってアキラは微笑んでくれた。

「「じゃあ、さようなら」」
ウチと桜子は歩きながら振り向いてアキラに向かって手を振る。アキラも手を振ってくれている。
そしてある程度進んでアキラの姿が見えなくなってくる寸前、アキラは振り向いて門の中に入っていった。
その時のアキラの姿をみていたたまれなくなった。

無理矢理、首に縄を付けても連れて帰りたかったができなかった、
自分の無力さを呪い山を桜子と共に下りていった。


季節は夏が過ぎ、秋に入り、冬が去り、桜の季節を迎えた。
「アキラ、びっくりするやろうな。」
ウチは再びアキラがいる寺に向かって山道を歩いていた。昨日は麻帆良中等部の卒業式だった。
式が終わった後、荷物を実家に送り返して麻帆良を後にした。
ウチも出家するために、もちろん両親も先生方も大反対だったが、
ウチはずっと出家するかもしれないけどアキラを取り戻すことができたら帰ってくる約束をして、しぶしぶ承諾を取り付けた。

また髪の毛も昨日、麻帆良で落としてきた。
頭にバンダナを巻いているが中身はスキンヘッドだ。これならアキラも追い返せないだろう。
そして寺が目に見えてきた。その時、後ろから声がした。

「亜子!!!」
その声を聞いて、後ろを振り向く。
「桜子、どうしてここに!?」
「亜子も同じ事考えていたんだね、一人だけいい格好させないよ。」
桜子の言葉を聞いて桜子の頭の帽子に目をやる。
「もしかして!!!」


ウチはつい言葉にしてしまう。
「そのとおり!!!」
握り拳を作った桜子は、帽子を取る、帽子の下は髪の毛がなかった。
「プッ、アハ、アハハハハハハ、桜子、その頭。」

ウチはおかしくて笑ってしまう。
「むーーーっ、そんなに笑わなくても亜子だって一緒なくせに。」
「そうやなーー」
ウチもバンダナを取る、桜子が見せたのだからウチもみせないと。
「ギャハハハハ、亜子似合ってる。」
けなしているか、誉めているか分からなかった。
二人で笑い合った後。話し合う。

「この山を下りるときは三人一緒やな」
「もちろん、そうだよ」
二人並んで、寺の前に来た。
「「ごめんくださいーーー!!!」」

アキラ、これからは一緒だよ。


終わり
 

    [管理人の短編一言感想集] その87
    BRでアキラが優勝し、尼さんになった短編。
    スキンヘッドが結ぶ友情。
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
    お問い合わせはyuyu_negirowa@yahoo.co.jpまでお願いします。
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