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短編No60-B 魔法先生ロワイヤル(中編)

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2007/03/24(土) 20:53:36
ネギま! バトルロワイヤル


「あら、刀子先生。こんな所に居らしてたんですか?」
「シ、シャークティー先生!?何故ここに?」
「必要な物資の調達。それと人の気配がしたので……」
島の都市部にあるドラッグストアーで二人の女教師、シャークティーと葛葉刀子は出合った。

「……その両手にある化粧品はいったい何ですか?」
刀子の手にあるもの。それは美白クリームやらパックなど……。
「こここ、これは関係ないです!」
「まったく……こんな非常事態に……随分と余裕なんですね?」
「くっ…!あなたこそここに何の用ですか!?」
「ドラッグストアーなんですから医療品の調達に決まってるじゃないですか?生き残るために化粧品はいらないでしょう」
もっともな意見に刀子も返す言葉が出ない。
「あなたは普段冷静な分一度慌てると全然周りが見えなくなる。悪い癖ですよ?」
「す、すいません……」
痛いところを突かれ項垂れる刀子。
確かに刀子は魔法バレ後の世界で刹那達と戦った時などかなり暴走していた。

「それだから前の旦那さんに逃げられてしまうんじゃないんですか?」

シャークティーのその一言で周りの空気一気に変わった。

「あなたに……あなたに私の何がわかるんですか!?あなたこそ影で鬼シスターって呼ばれてるくせに!」
「なっ!?それは関係ないじゃないですか!?あなたも化粧ばかりに力入れて、だからこんな状況でも化粧品を漁るんですよ!」
「うるさいわね!シスターの癖にそんな丈の短いスカート穿いて……はしたないったらありゃしない!」

「年増!!」
「破廉恥シスター!!」


こうなると収拾がつかない。女同士の喧嘩ほど恐ろしいものは無い。
口喧嘩からエスカレートして行き取っ組み合いの喧嘩になるのは時間の問題だった。
刀子が刀を抜き、シャークティーが十字架を取り出した。その時だった。

「何をやっているんだ!!」

一触触発というところで一人の男が仲裁に入った。

「「弐集院先生!?」」
「こんなに騒いで……もしこのゲームに乗った人に気付かれたらどうするんだ」
「「すいませんでした……」」
弐集院のもっともな意見に二人は同時に頭を下げた。
「騒ぎで誰か来るかもしれない。早く移動しましょう。さあ、こっちへ」
二人が冷静になったのを見計らい弐集院は先頭に立ち店の外へ向かった。
「はい……。先ほどは取り乱して申し訳ありませんでした……」
「こちらこそ、あなたの気持ちも考えず失礼な発言をしてすいませんでした」
お互いに自分の非を詫びると弐集院の後を追った。


「所で弐集院先生。何か脱出の方法でも?」
「一応あるけど……とりあえず君たちの支給品を見せてくれないか?」
「……何故ですか?」
いきなり支給品を見せろと言われ流石の二人も警戒する。だがそれを予測していたのか弐集院は表情一つ変えずに続けた。
「僕私の魔法は知ってるね?それでパソコンが必要なんだが……もし持って無くても他にも必要なものがあるんだ」
弐集院の魔法は電子精霊。それが何を意味するのか二人は理解した。彼はハッキングを仕掛けるつもりだ。
プログラムに進入にこのゲームを終わらせる。最悪首輪の解析も出来るだろう。



「そういうことでしたら……パソコンではありませんが……」
「私の支給品はこれです」
目の前の男に希望を持って二人は自分の支給品を差し出した。刀子は手裏剣一式。シャークティーは鍋とお玉だった。
「ちょっと脱出には使えないですね……にしてもシャークティー先生もそんなのが支給品とはついてないですね……」
苦笑いで答える弐集院に対してはぁっと溜息をつくシャークティー。
「おお、そうだ。ついでに私の支給品を……私のはこれです……」

――パラララララララララ

「え?」
何が何だかわからない。何故空が見えるの?何故背中に地面があるの?何故視界が赤いの?
わからない。何故隣でシャークティーが血を流して倒れているのか?何故弐集院先生が私にマシンガンを……

――パラララララララララ

物言わぬ体となった二人を見下ろしながら弐集院は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「思った通り……銃器には全て障壁貫通の処理がされている。これなら戦闘力の低い僕でも戦える……」
弾倉に弾を込めながら二人の亡骸に言い捨てる。
「ゲームに勝つには知略。脱出法なんかある訳ないじゃないですか」
二人のバッグから食料を奪うと弐集院はどこかへと去ってしまった。

葛葉刀子 シャークティー 死亡

【残り 6人】

住宅街にある民家に一人の男がソファーでくつろいでいる。
スキンヘッドにサングラスの大柄な男。一見マフィアに見えるがれっきとした魔法“先生”である。

「訳が解らん。何故この名簿の俺の所が『グラサンスキン』なんだ?」
彼が見ているのは地図と一緒に入っていた参加者名簿。そこに何故か自分だけ本名じゃない事に不満を感じていた。
「ふざけやがって……俺の名前はグラサンスキンじゃなく……」
『やあ諸君頑張っておるかのお?定時放送の時間じゃ』
突然頭の中に響く学園長の声。恐らく念話だろう。

『まずは死んだ者の発表からじゃ。明石教授、高畑・T・タカミチ、葛葉刀子、シャークティー、以上じゃ』
「もう半分近く死んだか。まさかあの高畑と刀子がもう死んだとはな……」
動揺がないと言えば嘘になるがそれでも冷静に名簿に×を入れていく。

『次に禁止エリアじゃ。0時にC−2じゃ。みんな気をつけるように。では健闘を祈る』
「C−2と……ここが禁止エリアになるな。というかマスがでかいな……」
地図のマス目は縦ABC、横123.全部で6マスしかない。
「10人しかいないし仕方ないか……よし、行くか」

バッグからゲームボーイのような機械を取り出した。画面にはいくつもの点が表示されている。
彼の支給品は首輪探知機。100m〜1kmまで切り替えが可能。防水、防火完備の高性能品だ。
「やはりこの二人組みの所に行ってみるか……敵ではなさそうだしな」
外に出ると目の前には真っ黒なベンツが一台あった。
「魔力の節約のためだ。少し借りるぜ」
そのベンツに乗り込む様はまさにマフィアのそれである。
無理矢理エンジンをかけると探知機で表示された二つの点に向けて走りだした。

【残り 6人】

森の中、ガンドルとネギは先程戦闘が行われていた海岸に向けて猛スピードで走っている。
「潮の香り……ネギ君ストップだ!」
「どうしたんですか?」
「もう直ぐ海だ。ここからはなるべく気配を消して慎重に行く」
「はい」
ガンドルは銃を構えながら、ネギは杖を構えながら歩いていく。
念のため認識阻害の魔法もかけておく。魔法使いには効果は薄いがやらないよりかは幾分かはマシであるだろう。
慎重に進むにつれ潮の香りが強くなっていく。そして草木の間から砂浜が見え始めた。

「ネギ君、私が様子を見てくる。君はここで待機してくれ」
「そんな……僕も行きます」
「ダメだ。もし罠があった場合二人とも掛かってしまったら助からない」
「じゃあ僕が見に行きます」
「尚更ダメだ。君を危険な目に合わせる訳には行かない。それにこう言う事は私のほうが慣れてるからね」

渋々と引き下がるネギにガンドルは笑顔を向ける。
「心配するな。きっと大丈夫さ。私も高畑先生も」
ガンドルはネギを残し海岸に向けて歩いて言った。

森を抜けると真っ白な砂浜に真っ青な海が現れた。
だが今のガンドルはそんな物は見ていない。ただ一点、何やら鳥が大量に集まっている場所を見ていた。
その鳥が何なのかはガンドルは知らないが少なくとも何かを食べているというのは解った。
ガンドルは周りに誰もいない事を確認するとそこに駆け寄った。

「高畑先生が…………こんな……」
周りの鳥を追い払うとそこには所々食いちぎられた高畑の死体があった。
「こんな姿に……とてもネギ君には見せられないな」
ガンドルは軽く手を合わせるとネギの下へ戻った。


609 :魔法先生ロワイヤル:2007/03/30(金) 23:59:28 ID:???
「どうでした!?タカミチは……!?」
戻るなりネギは心配そうな顔で尋ねてきてガンドルは答えに詰まった。
「高畑先生は………………………ここにはいなかったよ」
「え?」
「さあ行こう。街に行けば誰か……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
様子がおかしいガンドルにネギは言い寄るとあの放送が流れた。
『やあ諸君頑張っておるかのお?定時放送の時間じゃ』
「これは……念話!?」
『まずは死んだ者の発表からじゃ。明石教授、高畑・T・タカミチ、葛葉刀子、シャークティー、以上じゃ』
「しまった……ネギ君!」
放送の途中にも関らずネギは海岸に向けて走り出した。学園長が何か禁止エリアがどうこう喋っている。だがそんな事は頭に入らない。
今ネギの頭の中は『死んだ者』と『高畑・T・タカミチ』しかない。

「タカ……ミチ……」
目の前には無残な高畑の死体。頭の中に色々な記憶が駆け巡る。
魔法学校にいた頃魔法を教えてくれた事。麻帆良に来た時の事。学園祭、武道大会の事。
「う……うわあああああああああああああああああ!!」
ネギはその場に膝を付き叫びに近い泣き声をあげた。それを遠くから眺めるガンドル。
「まだ10歳の子供に……これは余りにも酷だ……学園長、私はあなたを恨みますよ」

そらから約1時間後、ようやくネギが落ち着いたので移動を始めた。
だが落ち着いたといっても相当ショックだったのか、一言も喋らず顔は俯いたままだった。
(不味いな……これでは戦闘どころかまともな行動すら危うい。やはり休ませるべきか……)
そんな事を考えていると調度目の前に民家が見えた。二人は民家に入る事にした。


「とりあえず今日はここに泊まろう。ネギ君、見張りは私に任せて君は少し横になって休みなさい」
「……いえ、僕は大丈夫……ですから…………」
明らかに元気がない。いや精気がないと言ったほうがいい。その様子にガンドルは溜息を一つ吐くと少し強いトーンで話した。
「厳しい事を言うが今の君は正直言って足手まといだ。だから今は休ん心の整理をしてもらう」
ガンドルの言葉でネギは暗い表情のまま寝室に向かった。
「許してくれネギ君。君には強くなって貰いたいんだ。君の父以上の魔法使いに……その為にはここで生き残って貰わないと」

ネギは布団に潜り込むとまた鳴き始めた。部屋にはすすり泣く声が響く。
「なんで……タカミチ……」
頭の中が混乱する。自分は今何を思っているのか?仕舞いには自分がどこにいるのかもわからなくなった。


――……君

――ネギ君

目を開けるとそこは学園の世界樹。そして目の前には真っ白なスーツ、高畑が立っていた。
「タカミチ!?」
「ネギ君。人はねぇ、どんな形だろうと必ず別れが来るんだ。だからその度にいちいち泣いてちゃダメだよ」
「でもタカミチ……」
「ナギもね……沢山の仲間を失ってた。でも彼は悲しみはしたがそうやって泣いたりはしなかったよ」
「父さんが……?」
「君も泣きつく前にする事があるはずだ。僕らが何を思って死んだのか?君は何をしなくちゃいけないのか?」
高畑を眩い光が包んだ。
「タカミチ……」

――死んだ僕らが生きたかったこの世界を……君は僕らの分まで生きなきゃいけない




「今のは……夢?」
目を覚ますとベッドの上だった。どうやらあのまま寝ていたようだ。
「死んだ者の分生きろ……か」
ネギはベッドから飛び起きるとガンドルがいるリビングへと向かった。

「もう気持ちは落ち着いたかい?」
「ガンドルフィーニ先生……先程はすみませんでした」
「……君はこのゲームに対しての覚悟は出来たかい?」
ガンドルは真っ直ぐネギを見据えると優しく、だがどこか厳しい口調で尋ねた。
「はい!」
ネギ迷いのない返事と決意の篭った目を見てガンドルはもう大丈夫だと悟った。

「よし、じゃあ食事をして作戦会議だ」
「はい!」
二人は今後の方針を考える事にした。現在9時を回った所。もう外は真っ暗だ。

この暗闇が二人にどのような結果をもたらすのだろうか……

【残り 6人】


「刀子が死んだか……」
ビルの屋上の貯水タンクの上、神多羅木は夜空を見上げながら呟いた。
「結局バツイチのままか……かわいそうに……なんて言ったらあいつ暴れるんだろうな」
普段なら刀子が暴れだして手に負えず結局高畑と二人掛りで取り押さえるというのがいつもの日常だ。
しかしもうその刀子はいない。神多羅木は刀子に対し恋愛感情は無かったが別の何か特別な感情は抱いていた。
穏健派の自分に対して冷静で厳しい刀子。その反面どこか抜けていて可愛い所もある。
安心して前衛を頼める程の腕前。そして彼女もまた安心して神多羅木に援護を任せる。
それほどまでにお互いに信頼しあっていた。

神多羅木は胸ポケットからタバコを取り出した。タバコを一本口に咥え火を点けると深く煙を吸った。
肺一杯に溜め込んだ紫煙を一気に吐き出すと煙は夜風に掻き消された。
「……パートナーのよしみで仇くらいとってやるか」
神多羅木はタバコを足で揉み消すと屋上から飛び降りた。

「か、神多羅木先生!?どこから!?」
神多羅木が着地した数メートル先に弐集院がいた。
「上から見てたら丁度あんたが歩いてたからな」
一歩、二歩と徐々に間合いを詰めていく神多羅木。

「あんた……一体誰を殺した?」
異様な雰囲気に弐集院もジリジリと下がる。
「わ、私は人殺しなど……!」
「血の匂いがするんだ。正直に答えてもらう。一体誰を殺した?」
「その……せ、正当防衛だったんだ!向こうが襲ってきたから仕方なく……!」
「……誰に襲われたんだ?」
「シ、シャークティー先生と……く、葛葉先生に!」
神多羅木は何も答えない。ただサングラス越しに弐集院を見ているだけだ。


「だ、だから見逃してくれないか……?」

そして弐集院は少しずつ後ろに下がっていく。

(ピンチとチャンスは紙一重……あそこには爆弾が仕掛けてある)

更に後ろへと下がる。

(もう少し……奴は気付いていない!後はバッグの中にあるスイッチを押せば……!)

「何なら仲間に……いや、いきなりは信用できないだろう。まずは私の支給品をあげよう!私のは……(今だ!!)」



(おかしい……何故爆発しないんだ?ちゃんとスイッチを押した……あれ?何か変だ?)
神多羅木がタバコに火を点ける。
「教師っていう人と接することが多い仕事をやってるとな、なんとなく考えが解るんだ。ましてや裏の世界に通じてると尚更な」

(何を言っているんだ?それに右腕が熱い……それに感覚がおかしい!?)
弐集院は恐る恐る自分の右腕を見た。だがそこに自分の腕はない。何度目を擦っても右腕は無かった。

「う、うわあああああああああああああああ!!うでえええええええええええええ!!」
「それに刀子が人を襲うはずが無い。暴走することはあっても本気で殺そうとする奴じゃない」


神多羅木は右腕を出しフィンガースナップの構えを取る。
「ひぃぃぃ!くく、来るなああああああ!!」
何度もバランスを崩しながらも必死で逃げる弐集院に狙いを定める。
「じゃあな、豚まん教師」
乾いた音、風を切る音、肉と骨が切れる音、何か重たい物が落ちる音。
それらが立て続けに鳴るとそこには一人の男の死体が出来上がっていた。


「妙な気分だ……」
弐集院の死体を見下ろしながら呟く。
仇は取った。なのに心が晴れない。というより何も感じない。教授を殺した時も何も感じなかった。初めて人を殺したというのに。
よく映画や小説などでは罪の意識に囚われたり、優越感に浸りなど様々な感情が表れると聞く。
「だが俺は何にも感じない。後悔もない。嬉しくも、悲しくも……」
空を見上げる。雲一つ無いキレイな夜空にキレイな三日月。
「よくわからねぇな……俺は何がしたいんだ?」
三日月に向かってタバコは投げ捨てるとそのまま歩き始めた。
少しずつ、だが確実に神多羅木の心は狂い始めている。だが神多羅木はその変化に気付かない。

弐集院 死亡

【残り 5人】


――現在10時17分。町外れの民家

「やっぱり何をするにしてもこの首輪が……」
「うむ……弐集院先生だったらハッキングして解除できるかもしれない」
「ではまずは弐集院先生を探すと言う事ですね?」
「ああ。では荷物をまとめて出発。この暗闇に紛れて行動する」
二人は荷物を持ち外を出たその時だった。
「ガンドルフィーニ先生……何か聞こえます……」
ネギの一言で一気に張り詰めた空気となった。二人はそれぞれ武器を構える。
(エンジン音……車か?)
徐々に近付いてくる音に二人の心臓の鼓動も早くなる。ガンドルは引き金に指を掛け、ネギは詠唱を始めた。
ついに動く物体を捉えた。それは車。あちこちベコベコにへこんだベンツだった。
そのベンツが二人の数メートル手前で止まるとドアが開いた。二人は身構える。

「む?もしかして俺の事敵だと思っているのか?」
「グラサン先生!」
「グラサン先生って……だから俺の名前は……」
「車から離れて両手を挙げて。そして幾つかの質問に答えてもらう」
ガンドルの命令で名前を教えられなかったのが悔しいのか不貞腐れるように両手を挙げた。

「君はゲームに乗ってるのか?」
「乗っていない。かと言って脱出も出来ないがな」
「ここに来るまで誰かと会ったか?生死は問わない」
「お前達が初めて……いや、鳩の死体となら出会ったな」
「何故ここに来た?」
「俺の支給品は首輪探知機。お前らは安全そうだと思ってここに来た」
「何故そう思う?」
「ゲームに乗ってるなら出会った時点で殺すはずだ。だがそうしないって事は乗ってないと考えられる」
(嘘は言ってないようだ……)
しばらく悩んだ末ようやくガンドルは銃を下ろした。それを見たグラサンスキンも手を下ろし深く息を吐いた。

「まったくヒヤヒヤさせやがって……」
「すまない。状況が状況だけにね……」
「でもよかったですよ!仲間が増えて」
緊張が解けて三人の顔に安堵の表情が伺える。
「それにしても車が滅茶苦茶ですね……」
「ライトを点けるわけにはいかないからな。お陰で夜道は大変だった」
「サングラスを外せばいいんじゃないか?」
「それはできんな。これはポリシーだ」
少しだけ和やかな雰囲気。それぞれに笑みがこぼれる。

――ピッピッピッピッピッ……

「なんの音だ?」
首輪とは違う電子音。グラサンスキンはポケットから首輪探知機を取り出しその画面を見て驚愕した。
「近くに誰かいるぞ!みんな気を……」
その時グラサンスキンを黒い球体が包んだ。
「な、何だこれ!?一体何が!?」
「これは……時間跳躍弾!?だが学祭限定のはず!?」
「それはただの転移弾ですよ」
「誰だ!?」
声のした方向を見ると瀬流彦が歩いてきた。


「高畑先生の支給品がこれでね。どこに転移するかは自分で決められるんですよ。……どこに転移すると思いますか?」
「まさか……!!」
「C−2……禁止エリアと言ったほうが解りやすいですかね」
部屋で学園長が言ったことが思い出される。禁止エリアに足を踏み入れた者は首輪が爆破する、と。
「ちょ……ちょっと待ってくれ!!俺は……」
「さようなら」
瀬流彦が手を振るとグラサンスキンを包んでいた球体は小さくなり、そして消えた。
「貴様……なんて事を!!」
「優勝のために決まってるじゃないですか?」
「くっ……!ネギ君!瀬流彦君を……!」
ネギの方を向いて言葉が詰まる。ネギから溢れ出る膨大な魔力によって。

「ネギ……君……?」
「瀬流彦先生……それタカミチの支給品と言いましたね?」
「ああそうだよ。高畑先生を殺して奪ったんだ」
ネギの殺気を含む質問にも平然とした態度で答える瀬流彦。
「僕は……あなたを許さない!」
「丁度いい。高畑先生と互角の君を倒せばみんな僕のことを認めてくれる」
「待てネギ君!落ち着……」
「うわああああ!!!」
ガンドルの呼び止めも聞かずネギは飛び出した。瀬流彦も笑みを浮かべながらそれを待ち受けるのだった。

グラサンスキン 死亡

【残り 4人】
 

    [管理人の短編一言感想集] その60−B
    お気に入り短編の一つ。魔法先生ロワイヤル。
    この短編ではガンドルフィーニの立場が非常に良い味を出しています。
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
    お問い合わせはyuyu_negirowa@yahoo.co.jpまでお願いします。
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