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短編No60-C 魔法先生ロワイヤル(後編)

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2007/03/24(土) 20:53:36
ネギま! バトルロワイヤル


飛び出したネギに対して瀬流彦は魔法の射手を放つ。だが幾つもの死線や修行をこなして来たネギに当たるわけもなかった。
「うおお!!」
「ちっ……!!」
光の矢を乗せた拳を瀬流彦に振るうがギリギリで避けられた。追撃をかけようとネギは前に出たが瀬流彦は転移弾入りの銃を向けた。
咄嗟に避けたがその隙を突かれて思い切り蹴り飛ばされそのままブロック塀に激突した。

「ネギ君!!クソっ……!!」
ガンドルも銃を構えるが瀬流彦はすでに森の中に走って行った。ガンドルは警戒しつつ急いでネギの元へ駆け寄った。
「大丈夫かネギ君!!」
瓦礫の中からは未だ闘志に燃えるネギが出てきた。頭からは少し血が垂れている。

「無闇に敵に突っ込むなんていくら君でも無茶だ!」
「大丈夫です……それとガンドルフィーニ先生は手を出さないでください」
「何を言っているんだ!!生死が掛かってる戦いに……」
「お願いします」
ネギの目を見てガンドルは悟った。もう何を言っても無駄だ、と。

「解った……だが君の命が危ないと判断した場合は迷わず加勢する。いいね?」
「ありがとうございます。僕の我侭を聞いてくれて」
ネギはガンドルに一礼すると森に向けて駆け出した 。
「高畑先生見てますか……?彼はもう子供じゃない、立派な男です。あなたのお陰ですよ」
ガンドルもネギの後を追い森に消えた。


ガンドルがたどり着くとそこは既に戦場と化してた。木々は薙ぎ倒され地面には幾つも穴が開いていた。
もっともこれは殆どネギの仕業である。瀬流彦はネギの攻撃を避けるだけ。
いや、避けるので精一杯と言ったほうが正しい。ガンドルから見ても明らかにネギが優勢である。

(だがなんだこの違和感は……?ネギ君が押しているのに……徐々に掠り始めているのに何故?)

考えに耽っていると鈍い音が響いた。見るとネギの一撃がきまり瀬流彦が吹っ飛んでいた。

「ぐ……!!くそっ!!」
「……僕はあなたを許さない。ラス・テル マ・スキル マギステル……」
詠唱を始めると周りには電気を帯びた魔力が溜まっていく。

(何故瀬流彦君はこんな無謀な戦いを仕掛けた?実力差は歴然……まさか何か罠が……!!)

その時ネギの魔力の電気が光ったその瞬間ガンドルは人影が、それが銃を構えているのが見えた。

「雷の暴風!!」
「危ないネギ君!!」

轟音が鳴り響き砂や木の葉や塵が舞う。その中にいたのは……

「ガンドルフィーニ先生!!」
「だ、大丈夫か……ネギ君……」
「くそっ!こ、こんな所でぇ……」
ガンドルと瀬流彦、共に左脇腹から血を流していた。

瀬流彦の支給品は式紙。自分と分身を入れ替え本物は別の場所からネギを狙っていた。
雷の暴風は大技。それ故に隙は大きい。瀬流彦はそこを狙った。
だがそれにで気付いたガンドルはネギの盾となり自らも銃を放ち瀬流彦に当てた。


「ぼ、僕はこんな所で死ぬわけには……みんなに認められるまでは…」
必死の形相で睨むその姿は最早学園での爽やかなイメージは欠片も無かった。
「そんなに……人を殺してまで周りに認められたいんですか!?」
「君に何がわかる!!」
瀬流彦の表情が一層厳しいものになる。
「ぼ、僕だって学園に来たときは将来を期待されていたんだ!それが君が来てからは君ばかり持て囃され……」
瀬流彦はポケットから大量の紙を取り出した。
「だから君にだけは負けられない!どんな姑息な手を使っても……」
紙を空中に投げ捨てるとその全てが瀬流彦に変身した。

「しまった!!」
「さあ!行け!あいつらを殺せ!」

――ザン!

「え……?」
ネギ達目掛けて飛び出した瀬流彦達はことごとく体を切り刻まれ元の紙に戻った。
「な、何故だ……!?奴らは……なにも……」
「もういいだろ?瀬流彦」
「……!!」
突然の後ろからの声。瀬流彦が後ろを振り向くと黒いスーツが見えた。
「か、神多……」

――パチン

(僕は……こんな所で………………)
胴体と切り離された首から上だけの瀬流彦の口がそう動いた。

「若さゆえの過ちってやつか……こいつもかわいそうな奴だったな」
短くなったタバコを血溜まりに捨てるとそういい捨てた。


「神多羅木先生……」
「大丈夫かガンドル?」
「一応魔法で流血を抑えてるが……正直止まりそうにない……」
「そうか……」
勢いはないがそれでも血は大量に流れている。顔色もかなり悪い。
「僕回復系は苦手なんです。神多羅木先生お願……」

――パチン

ネギの頬を何かが掠めた。後ろで鈍い音が響く。神多羅木は右手を出している。ガンドルは……

「な、何故だ……神多羅木先生……」
「悪ぃなガンドル……何故と言われても俺もよくわからん」
「え、うあ……ああ……ガンドルフィーニ先生!!」
ガンドルは胴体を真っ二つにされていた。ネギはガンドルを抱きかかえた。

「ガンドルフィーニ先生!!」
「私はここまでのようだ……ネギ君、必ず生き残ってくれ……」
「そんな……ガンドルフィーニ先生は死んではダメです!!」
「お父さんを越えたいんだろ?ならば私達の死を乗り越えるんだ。悲しい事も笑い飛ばせるくらい強くなりなさい……」
そういい残すと穏やかな顔で目を瞑った。
(最後に家族を……娘を抱いてやりたかったな……)

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ネギの絶叫が夜の森に悲しく響いた……。


瀬流彦 ガンドルフィーニ 死亡

【残り 2人】


「どうして殺したんですか!!助けてくれたんじゃないんですか!?」
涙や鼻水で顔をグシャグシャにしながらネギは感情剥き出しで神多羅木に叫ぶ。
神多羅木はタバコを一服すると呟いた。

「わからねぇんだ」
「え?」
「坊主、人を殺した人間の精神がどうなるかわかるか?」
「何を……」
「テレビでもよく見るだろ。殺人を犯した人間が後悔の念に囚われ自殺とか逆に爽快で反省の色が見えないとか」
短くなったタバコを捨て新たな一本を取り出した。

「戦場はもっと酷いみたいだ。まるでゲームのように殺した人数を競ったりしてるのもいるらしい」
「何が言いたいんですか……」
「人は人を殺すと色んな感情が表れるんだ。喜怒哀楽や後悔、達成感、その他色々とな。だが俺は何も感じなかった。
 教授を殺した時も弐集院を殺した時もな。念のため瀬流彦とガンドルも殺したがやはり何も感じなかった」

「それだけのためにガンドルフィーニ先生も……あなたは狂ってます!!」
「そうだな……俺は狂ってるかもしれない。だが狂ってないのかもしれない。
 それすらもわからん。だから優勝して確認する。自分が狂ってるかどうかを」
神多羅木の魔力が研ぎ澄まされていく。腕を出しフィンガースナップの構えを取る。

「だから坊主、悪いが確認のためここで死んでくれ」
連続で乾いた音が響くと無数の鎌鼬がネギを襲う。それを全て魔法の射手で相殺させた。


「やるな坊主。やっぱり天才ってのはすげえな」
「神多羅木先生、僕は負けません。タカミチやガンドルフィーニ先生のためにも……あなたを止め見せます!!」
ネギは上着を脱ぎ捨てると杖を槍に見立てて構えた。
「おまえと戦えば何かわかりそうだ。まあ勘だけどな…」
神多羅木も今度は両手でフィンガースナップの構えを取る。
両者共にピクリとも動かない。全感覚器官研ぎ澄ませお互いに隙を探る。

(神多羅木先生は遠距離タイプ……瞬動で一気に懐へ飛び込んであの手を抑えれば……!)
(格闘大会を見る限りじゃ拳法使い。恐らく接近して俺の手を塞ぐはずだ……)
(師匠や古老師から教わった事を出し切れば……)
(とにかく成長スピードが半端じゃない。あの時より格段に強くなっているはずだ)

先に動いたのはネギのほうだった。瞬動と風楯を使い一気に間合いを詰める。
(スピードは僕のほうが上だ!それにこれなら攻撃されても…………え!?)
遠距離主体の神多羅木は距離をとろうと後ろに下がる。ネギはそう思っていた。だが実際は違った。神多羅木は前に出てきたのだ。
自身の瞬動と神多羅木の前進であっと言う間に至近距離となった。それこそ攻撃に移る前にお互いは接近した。

「センスはあるがまだまだ経験が足りんな」
神多羅木はそのまま通り過ぎる形でネギの足を払った。瞬動をまだ上手く使いこなせていないネギは簡単に転んでしまった。
「うわっ!!」
「固定概念を捨てないと今みたいにあっさりとやられちまう」
「……不味い!!」
神多羅木は倒れているネギの背中にフィンガースナップを…………放てなかった。ネギの光の矢が目の前まで迫っていたからだ。
慌てて回避するとその隙にネギも体勢を立て直し距離をとる。

(なかなか対応が速いな……だがまだまだだな)
(危なかった……完全に手の内を読まれてた。一旦距離を取って作戦を……)
だが中々そうはさせてくれない。考える間も与えず神多羅木の攻撃がネギを襲う。


「どうした?早く手を打たないと死んじまうぞ?」
(くっ……踏み込む隙がない!)
まるでマシンガンのように放たれる攻撃。避けはするがそこから先に進めない。隙がない。
風楯を出し突撃しても一点を集中して攻撃され風楯を突き破る。危うく動脈を切られそうになった。

「戦闘中に考え込むのは危険だぜ」
いつの間にか神多羅木の手が目の前にあった。そして……

――パチン


「ぐああああああああああああ!!!!」
草むらに血がポタポタと垂れ緑の葉を紅く染め上げる。ネギの足元には先ほどまで自分の頭についていた耳が落ちていた。
「頭真っ二つだと思ったんだが……あれを避けるとは流石だな」
神多羅木は関心の声を上げながら近づく。絶対に回避不能で尚且つ自分が安全な場所まで歩み寄る。

(熱い!痛い!でも……タカミチやガンドルフィーニ先生はもっと痛い思いをして……)
(目がまだ生きてる……こう言う場合は次で確実に決めないと後々厄介だ)
神多羅木はちゃんとした距離ではなかったがそれを補うほどの数の攻撃を繰り出した。
(こんな所で負けられない!二人の為にも!!)
「逆巻け 春の嵐 我らに 風の加護を 風花旋風 風障壁!!」
その瞬間ネギの周りに竜巻が起こり神多羅木の攻撃を全て防いだ。

「風障壁……だがもって2〜3分。時間稼ぎにもならん。一体何をする気だ?」
「よし……次で決めます。タカミチ……ガンドルフィーニ先生、見ていてください!」

神多羅木はネギの行動に警戒し、ネギは神多羅木を倒すための準備をする。
障壁が解除するまでの時間は残り1分を切った……。


【残り 2人】


「風が弱まってきたな。あと30秒くらいか」
障壁が効果が残り僅かだと悟り神多羅木は身構える。
「何を仕掛けてくるのや……ら……」
神多羅木は障壁の中から出てきたものに度肝を抜かれた。そこには数十人ほどのネギがいたからだ。
そしてそのネギ達は一斉に神多羅木目掛けて襲い掛かった。

「分身……いや、たしかあの坊主は使えないはず。だとすると式紙かなにかか……」
神多羅木は冷静に避けながら思考を巡らす。
(偽者に紛れて攻撃って寸法か……)
カウンターを合わして行き徐々にその数が減って行く。その時上から気配がした。

「ラス・テル マ・スキル マギステル。来れ雷精 風の精 雷を纏いて吹きすさべ……」
ネギが呪文を詠唱する。あと少しという所でお腹を何かが掠めた。
「悪ぃな、坊主……」
「え……?」
呪文詠唱が出来ない。呼吸ができない。下半身が変だ。お腹から下が……

「考えはよかったがな……本物は耳が切れて大怪我なのに偽者は綺麗なまんまだから簡単に見分けられる」
「あ……か……」
「苦しいか?今楽にしてやる……」

――パチン

神多羅木のフィンガースナップを放つとネギの首が体から切り離された。

「終わったか……」
神多羅木は新たなタバコを取り出し立ち去ろうとした。その時上空からボンッ!という音が響いた。
何事かと思い空を見上げると先ほどネギがいた所に紙がヒラヒラと舞っていた。

「完全にやられたな……」

神多羅木がそう呟くとほぼ同時に破裂音が響き黒い球体に包まれた。
「まさか二重に仕掛けてくるとはな」
神多羅木は球体の中で最後のタバコに火を点けた。

ネギは瀬流彦の式紙と転移弾を取り出した。そして一つだけ自分とまったく同じ者を出し、後はワザと綺麗な自分を出した。
結果神多羅木はまんまと一体だけ本物と同じ怪我をしている偽者を本物と思い込んだ。
そして本物を倒したと油断してる隙に転移弾入りの銃を撃つ。そして今の状況である。

「神多羅木先生……」
「そんな顔すんな坊主、勝負に勝ったんだから胸を張れ」
球体が徐々に縮んで行く。
「坊主、頑張って自分の夢叶えな」
そして完全に消え去ってしまった。

「仇だとか……どんな理由があろうと……人を殺すなんて虚しいだけじゃないか…………!」
ネギは銃を天を仰いだ。
「なんで殺しあわなくちゃいけないんだ!!!!!!!!」
ネギの絶叫が辺りに木霊する。やがて一点の光の柱に包まれるとネギの姿が消えた。


俺は狂っていなかった。何も感じないなんて嘘だった。転移される瞬間に感じた感情……。

――安心感

もう人を殺さなくてすむ。そう思ったからだ。本当は殺しはしたくなかったのかもしれない。でも生き残りたかった。
だから何かと理由をつけて殺し、何も感じないフリをして殺し……結局一番生にしがみついてたのは俺だったってわけか。
教授を殺すときの言葉、今思い出せば笑えてくる。人の事言えねえな。

「本当に、あなたは人を上から見下すようことばかり言って……」
気が付くと神多羅木真っ白な空間にいた。そして目の前には刀子がいた。

「刀子……?」
「そろそろ自分が一番馬鹿だって気付きなさい。そんな事ではパートナーを解約しますよ?」
「心配かけて悪ぃな。だがもう自分の馬鹿さ加減には気付いたよ。だからこれからみんなに謝りに行く」
「そう……ならいいでしょう。さあ行きましょう」
「なんだお前も来るのか?」
「当然です」
「彼ともう会えないからって俺に乗り換えか?」
「ばばば、馬鹿な事言ってんじゃありません!!パートナーとしての責任で同伴するだけです!!」
「そうか。……でも、おまえの仇をとるってのは本気だったぞ?」
「…………ばか……」

二人は歩きだすと、やがて光に包まれ消えて行った。

神多羅木 死亡

【優勝 ネギ・スプリングフィールド】

ネギは気が付くと学園長室にいた。そこは麻帆良とは思えないほど重く暗かった。
「優勝おめでとうネギ君」
学園長の近衛近衛右門が椅子に座りながら笑顔でそう言った。
「何故こんな事をやらせたんですか……?」
ネギは静に、だが怒りを含んだ声で近衛右門に質問した。

「残念じゃがその質問には答えられんのぉ……」
「何故答えられないんですか!?」
あまりにも理不尽過ぎる。ネギは抑えていた感情を剥き出しにして詰め寄ろうとした。

「そいつに何を言っても無駄だ」

入り口からの声に振り向くとそこにはエヴァンジェリン・A・Kマクダウェルが腕を組んで立っていた。
「いい加減正体を現したらどうだ?」
「どういう……」
「流石は闇の福音と呼ばれただけある……隠し事は無理みたいだのぉ」
近衛右門は自分の顔を掴むと一気に剥がした。そこには別の新たな顔があった。
忘れもしないあの京都修学旅行での事件。ネギ達を苦しめた眼鏡をかけた京都弁の女。

「天ヶ崎千草……!」
「お久しゅうお二人さん」
「やはり貴様か……目的は?」
別段驚く様子もなくエヴァは千草に尋ねる。


「もちろんこの国を乗っ取るためや。そのためにまず麻帆良を押さえる。あの世界樹の魔力さえあればどんな鬼でも呼び出せるからなぁ。
 そのためにはあんた等魔法使いが邪魔なんですわ」
千草はセ扇子で顔を隠しながら続ける。

「このジジイもちょっと孫を人質に取って自殺をお願いしたらホンマに死におったわ。あとはわてがじじいになりすましたってわけや」
千草が何やら術を唱えると部屋のあちこちから鬼や物の怪が現れた。
「他の魔法使いは死にアンタも疲労困憊……そこの真祖はんも呪いで今は唯の少女。そちらさんに勝ち目はないどすえ?」
千草の言うとおりネギは立っているのもやっと。加えて今日はよりによって新月。エヴァが最弱の状態だ。

「このままじゃ……師匠ここは一旦……」
「逃げられまへんで?この部屋には結界を貼らせてもらいました。もう出る事も入る事も不可能どすえ」
千草は勝ち誇った笑みを浮かべると高笑いをしだした。だがその笑いを掻き消すようにエヴァは冷たく言い放つ。

「勝ち目がないのは貴様のほうだろ?」

その瞬間部屋の気温が一気に下がった。そしてエヴァから膨大な魔力が溢れてく。
「な、なんやその力!?あんた呪いで魔法が使えないハズじゃ……!?」
「じじいが自殺したらしいが……ついでに私の呪いを軽くしてくれたみたいだ。つまりは生贄ってやつだ。
 流石に完全解呪ではないがそれでもお前を捻りつぶすほどの力はあるぞ?」

エヴァ手をかざすと氷柱が鬼の頭に刺さり完全に消え去った。
「な……!!」
圧倒的な力の差を見せ付けるエヴァ。千草は危険と判断し窓から逃げようと結界を解除しようした。


652 :魔法先生ロワイヤル:2007/04/06(金) 01:50:59 ID:???
「おっと。折角逃げられないようにしたんだ。もう少しそのままにしとこうじゃないか」
エヴァが指を弾くと千草の唇が凍りつき口を塞がれた。今まで体感した事が無い痛みにその場にのた打ち回った。
「そういえば世界樹の深部に何やら仕掛けてたようだな。散歩中のアルビレオが見つけて処分したようだがな」
千草の顔が絶望に歪む。エヴァはそれを冷めた目で見下ろしながら手をかざす。

「そろそろ終わりにするか……」
「待って下さい!」
「どうした?こいつのせいで死んだんだ。憎いんじゃないのか?」
「憎いです……けどもう命を奪ったりとかはもう沢山です……」
もう目の前で人が死ぬのは耐えられない。たとえそれが憎むべき敵であっても。

「ふん……リク・ラク ラ・ラック ライラック……」
「エヴァンジェリンさん!!」
だがそんなネギの願いを無視してエヴァは呪文を唱える。指先から黒い霧が発生して千草を包む。
「殺しはしない。だが普通に生かさない。こいつは永遠に覚めない幻術をかけた」
霧が晴れると千草は白目を剥きピクリとも動かなくなった。

「世の中には死よりも苦しいことはいくらでもある。お前の生かすという選択が必ずしも正しいとは限らない
 前も言ったが綺麗事だけでは前には進めん。あのゲームで何を学んだか……もう一度よく考えておけ」
そういい捨ててエヴァは部屋から出て行った。ネギはそれを複雑な表情で見送った。



――数日後
世界樹の根元でネギは一人考える。

何が正しくて何が間違っているのか?ここ最近それをずっと考えている。
わからない。でももしかするとそれが正解かもしれない。わからないから答えを見つける。
みんなそれぞれ問題を持って生きている。小さなことから大きな事まで。
その答えを見つけるためみんな必死に生きているんだ。何十年かけても見つからない答えを見つけるために。

タカミチは僕に死んだものの分まで生きろと言った。だから僕はみんなの代わりに答えを見つけるんだ。

ガンドルフィーニ先生は強くなれと言った。きっとそれは答えを見つけるためのヒントなんだ。

神多羅木先生は夢を叶えろと言った。きっとそれは答えを見つけるための大事な過程なんだ。

色んな先生の言葉を一字一句しっかり胸に刻もう。例えくだらない話でもいつかは役に立つから。

立ち上がろう勇気を持って。歩き出そう胸を張って。


「お!ネギ坊主、私より早く来るとは偉いアル!」
「ありがとうございます!早速稽古をお願いします!」
「さあ明日菜さん。私たちも……」
「解ってるわよ!ネギには負けてられないからね!」


今できる事を精一杯やって少しづつ答えを見つけよう。色んなことに挑戦して何度も失敗して答えに近づくんだ。

――だからみなさん、僕の事を見ててください。僕は必ず…………


魔法先生ロワイヤル   完
 

    [管理人の短編一言感想集] その60−C
    お気に入り短編の一つ。魔法先生ロワイヤル。
    魔法先生ロワイヤルは、いつ読んでも全体的にまとまりがあって良い作品だと思っています。
    最後の終わり方は結構好き。
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
    お問い合わせはyuyu_negirowa@yahoo.co.jpまでお願いします。
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