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短編No102 ザジ短編

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2008/03/15(土) 19:09:38
ネギま! バトルロワイヤル


仄暗い夜。ザジ・レイニーデイ(出席番号31番)は行くあてもなく森の中を彷徨っていた。
時間的にはもうすぐ夜明けといったところか、真夜中よりは少し明るい感じがする。
森の中には所々に川があり、そこは地面がぬかるみ歩きにくい。

数時間前から始まったこのゲーム。死亡者は既に5人。
死亡者の中にはすぐには死なないだろうと思われていた龍宮真名も含まれていた。

普段自分から喋ることの無いザジは喋る代わりに考えることを得意とした。
ザジは考える。これからどうしていくかを。

殺して生き残る?――――いくらあまり話したことが無いとはいえ人を殺していいのか?
ここで殺される?――――どうだろう?自分はまだ生きたい。でもこの状況、どうなるか…

心の中での葛藤。殺さなければ殺される、でも殺したくない。
それは人としてはごく一般的な考え。ただこの状況がそれを許してくれない。

ザジは考えるのをやめた。
前を見ると見渡す限りの大海原。いや、湖だった。
考え事をしながら歩いていたため気付かなかった。
ザジは周りを見渡してみる。
薄暗いためよくは見えないが羽音がするあたり、何羽か小鳥がいるようだ。


ザジは口笛を吹き小鳥を集める。
常日頃からサーカス団として鳩を扱ってきたザジにとって小鳥をなつかせるのは造作もないことだった。
すぐに1羽の小鳥がザジに寄ってくる。全身が白く手のひらにすっぽり入るぐらいの大きさだ。

左手の指にとまった小鳥の頭を指先で撫でてやる。すると小鳥は不思議そうに首をかしげた。
その様子が可愛らしく、ザジは思わず微笑んでいた。
こんな殺し合いのゲームの中で自分が笑うなんてザジは思ってもみなかった。
そしてそのゲームについて真剣に悩んでいた先程の自分が非常に阿呆らしかった。

そしてザジは決心する。
自分の命がどうでもいいとはいわない。ただこんな狂ったゲームの中でも精一杯生きようと。
楽しく生きようと。

ザジは湖の中に入っていく。指には白い小鳥を乗せて。
小鳥がチチッと鳴く。そして羽繕いを始めた。
湖の水は冷たいが不思議とザジは平気だった。

ふと思い、小鳥がのる手を水の中に浸してみる。
すると小鳥は慌てて水から飛び出しザジの肩にとまる。少し文句をいうように小鳥はザジの顔をつつく。
ザジはまた微笑む。そして感じる。自分は今楽しい、こんな時間が少しでも長く続けばいいと。


しかし今は殺し合いのゲームの最中。そんなに長くは続かない。
ドオォォォォン!!!
突如鳴り響く銃声。

次の瞬間。ザジは胸のあたりに強烈な痛みを感じる。それと同時に体が後ろに仰け反った。
小鳥は驚いて肩から飛び去っていく。

ザジは仰向けになったまま水の上に浮かんでいた。
右胸からは血が大量に溢れ出している。撃ち抜かれたのは恐らく肺だろう。

―――あぁ。自分は死ぬんだな。悲しいけど、仕方ないか。
ザジが死を悟って水に浮かび続ける。そこに先程の小鳥が戻ってきた。
小鳥はザジの胸にとまった。そしてザジの顔の方へトコトコ歩いてくる。
―――あっ、さっきの…わたしの血で羽が汚れてる。ごめんね…
ザジは小鳥の頭を撫でてやる。
すると小鳥は前に撫でられたときと同じように首をかしげた。
そしてザジはまた微笑む。

―――綺麗な朝日………
いつのまにか夜は明け森の木々の隙間から橙色の光が湖に差し込んでいた。

ザジは最後の力を振り絞って小鳥を手にのせ空へ羽ばたかせた。
―――サヨナラ。

小鳥は空高く飛び、もう二度とザジの元へ帰ってくることはなかった。

【出席番号31番 ザジ・レイニーデイ 死亡】
 

    [管理人の短編一言感想集] その102
    ザジ視点の短編。
    ザジって滅多に喋らないけど心の中ではこういうことを考えているのかな?
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
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