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短編No101 夕映物語-C 分岐Cルート

 
作者:葱坊主 ◆tHHIOImW4w
掲載日時:2008/03/14(金) 23:19:45
ネギま! バトルロワイヤル


<7B>【分岐B】
「それだけ……なのですか?」
「フッ、まだまだ私のことが良くわかってないねーゆえ吉君。私の行動原理は面白いか面白くないか。ただそれだけだよ?」
夕映の握っていた拳がぶるぶる震える。
「たった……たったそれだけの理由でクラスの皆を犠牲にしたって言うのですか!?」
「まあね」
ニヤついた顔でハルナは答える。
心を落ち行けようと夕映は大きく息を吐く。
「……良くわかりました。貴方は人として大切な心を失ってしまったようですね」
「フン、人として大切な心ね……まあ、それは認めても良いかな? でもね、ゆえは人のことを責める資格があるのかな?」
「!!」
「忘れたとは言わせないわよ。ゲーム中にゆえが行ってきたこと。言っておくけどトボケても無駄よ?
 ゆえの行動は私が監視していたんだからね。さーて、ゆえは何人クラスメートを殺したのかなー?」
「そ……それは」
夕映は口篭る。うろたえて2、3歩ハルナから離れた。
「最初はゆーなだったよね。覚えてる?ゆーなはナイフを持って追いかけてきたのよね。
 ゆえはどうしたっけ?自分に支給された拳銃でゆーなを撃ち殺しちゃったんだよねー?……自分が生き延びるために!」
「や……やめて下さい……」
消え入りそうな声で夕映はハルナに言った。しかし、執拗なハルナの責めは夕映を逃がさない。
「ゆえは優勝するまでに、けっこうクラスメートを殺したよね。最後の龍宮さんまで入れて6人だっけ?
 ちなみに6人は龍宮さんと並んでクラス最多なんだよ?」
夕映は言葉を発することが出来なくなっていた。両目にジワリと涙が滲む。
「ほーら、何か反論ある?ゆえは私のこと責められる立場なの?ねえ、何か言ってみなよ!」
悔しそうに夕映は俯いたまま体を震わせている。

ハルナに対して反論したいが思うように言葉が出てこない。
「……・・・」
「え?聞こえないなあ、何か言った?」
大げさに手を耳に当ててハルナが聞き返す。
「確かに……私はクラスメートを何人も殺しました。
 そういう意味では、私はハルナを責める立場にないのは確かです」
「フーン、ようやく自覚したようね」
ニヤニヤと笑みを浮かべてハルナは勝ち誇る。
「……わ、私は!」
「ん?」
「私は、のどかとの約束のためにもクラスメートを殺してでも生き延びたかった……」
絞るような声で夕映は自分の思いを語る。
「へーえ、のどかねえ……そんなにのどかとの約束が大事?」
「ハ、ハルナ!のどかの事まで悪く言うのはやめて下さい!貴方だって親友だったはずです」
ハルナはやれやれとばかりに両手を大きく広げてため息をつく。
「あんたは分かっていないのよ。のどかの事もね。みんな自分が可愛いのよ?
 ゆえ、あんたは知らないから教えてあげる。
 あんたが死の直前ののどかに会った時、のどかが誰も殺しをしていない綺麗な体のままだったと思った?」
「……エ?」
夕映は後ろへとよろめいた。夕映は信じていた。のどかだけは手を汚すことなどしないということを。
「のどかだって死ぬのが怖けりゃ何だってやるのよ。
 のどかがゆえと会うまでに何人殺していたか教えてあげるわ。実はのどかは」
「やめてぇ―――っっ!!」
夕映は両耳を塞いでその場にしゃがみ込んだ。
信じていたものの何もかもが足元から崩れていく。
「やめっ……ハルナ……それだけは……私の中っ……のどかを……壊さないで……」
両目から涙が溢れ、うまく言葉にならない状態でハルナに嘆願する。
既に夕映はハルナのことが見えていなかった。ただ自分の中で、壊れそうになる自分の心を必死に繋ぎ止めようとしていた。

ハルナは夕映に近づいていく。
いつの間にかハルナの右手には拳銃が握り締めていた。
無言のままハルナが夕映の目の前に立つ。夕映はハルナが目の前にいることさえ気付かない。
拳銃を持ち上げると、銃口を夕映の額に押し付ける。
「……さよなら、ゆえ」
ハルナは引き金を引いた。

パンッ!と乾いた音が部屋の中に響いた。

銃弾が脳天を貫いた勢いで夕映はそのまま地面に頭を叩きつけられる。そして夕映は動かなくなった。
煙の立ち上る拳銃を下ろしながら、ハルナは夕映の死体に語りかける。
「……ゆえには詳しく説明していなかったけど、3−Aのクラスの中で生き延びることができるのはたった一人。
 私も例外ではなかったのよ。私と夕映で殺しあって、最後に生き残った方が本当の優勝者だったの。
 私は絶対に死にたくなかったからね。ゆえの心の隙を突かせてもらったわよ。……悪いわね」




<8B>【分岐B】
ハルナは倒れた夕映をじっと見下ろしていた。
「へへっ、さすがだなハルナ姉さん。親友相手にそこまで非情になれるとは、俺っちも恐れ入ったぜ!」
カモがハルナの背中に話しかける。
「なによ、最初にカモ君と組むときに私の意志は伝えておいたはずよ?
 生き残るのは私よってね。そのためには親友ですら裏切るとね」
カモの方を振り向くこともなくハルナは答えた。
「まあそうなんだけどよう。少しは躊躇するかと思ったんでね」
「言ったでしょ。私が生き残るのが最優先だってね」
ハルナは少しだけカモの方を向き、苛立たしげに答えた。
「悪りぃ。もう聞かねえよ。……それよりハルナ姉さん、泣いてんのかい?」
「なっ、泣いてなんかないわよっ!」
「まあいいけどよ」
そう言うとカモは机から床へ飛び降りた。

「予定通り行けば、ゲームのことを知った兄貴達がそろそろ助けに来るはずだ。
 打合せしたとおり、ハルナ姉さんが生き残りとして兄貴達と再会する。
 そして、主催者達は姉さん一人を残してすでにどこかへ去ってしまったと証言すれば終わりだ。
 この校舎もこれから爆破する。俺達がゲームを運営していた証拠らしい証拠は残らねえ」
「わかっているわ」
カモに背中を向けたままハルナは答える。
「そんじゃ、校舎の爆破準備のために先に用意しとくぜ。今から10分後に爆発だ。
 その前にこの校舎から離れておいてくれよ」
そう言うと、カモは校長室から出て行った。

誰も居なくなり、ハルナはたった一人で校長室の中に立っていた。
「か、完璧な計画だったわ……これで私一人だけは生きて帰れる。……すべて私の計算どおりに事は進んだわ。
 クラスのみんなを裏切る覚悟は出来ていたわ……後悔なんかしていない。
 ……どうしちゃったんだろう私……なんで涙が溢れてくるんだろ?」
ハルナ嗚咽を漏らして俯いた。両目から流れ落ちた大粒の涙が床を濡らしていく。
濡れた床は次第にその面積を広げていった。

どれだけそうしていただろうか、不意にハルナは袖口で涙を拭い、意を決したように顔を上げる。
「そう!後悔はしない。私は生き残るんだ!」
そう叫ぶと、ハルナは校長室から出るために扉へと向かった。
校長室の扉に手をかけたとき、ハルナは思い出したかのように後ろを振り向いた。
そこには自分の流した血の池の真ん中で倒れ込んでいる夕映の姿が目に入る。
ハルナの表情が少しだけ曇る。
「ゆえ、聞こえてはいないだろうけど、最後に一言だけ言っておくわ。
 のどかは、自分が殺されるまでクラスメートの誰も殺してはいなかったわ。
 さっきのはゆえを動揺させるための嘘よ。のどかは……のどかだけは私達みたいに穢れてはいなかった……」

夕映は何も答えない。
自嘲気味に笑みを浮かべたハルナは、校長室から出て行った。2度と後ろを振り返ることはなかった。

【分岐B】END
 

    [管理人の短編一言感想集] その101-C
    夕映が主役の短編。
    こっちのBルートはBADENDといったところだろうか
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
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