『ごめんね………円。』
―――そう言い放った彼女はもうこの世にはいない。
そして目の前にはその彼女の屍が横たわっている。
「何で、何でよぉ………美砂ぁ……」
終わりたくない。こんなゲーム終わらせたくない。
こんな言葉、いなくなっちゃったみんなが聞いたら殺されちゃうかもしれない。
本当はそうしてもらいたい―――だけどみんなはそんな事はもう出来ない。
だって―――死んじゃったから。
「ねぇ、円?……もしゲームに生きて帰れたら、何するー?」
自分の隣で優しい声で話しかけてくれた桜子。
私はイマイチ思いつかないので桜子に聞き返す。
「え?私?ん〜、やっぱカラオケっ!!?」
「あはは……やっぱか…」
桜子はいつもとは変わらない満面の笑顔でこれからの事を話してくれる。
ニコニコと笑いながら。だけど桜子の笑顔はいつものとは違う固く、自分の意志で作ったような……人工のようなものだった。
一緒に笑って帰りたい。そんな考えを持っていた。
だけど――その作り笑いを見て、無理だって悟ってしまった。
『定時放送を始めるぞ。死亡者、出席番号2番、明石裕奈、出席番号5番、和泉亜子の二名。』
ゆーなと亜子……死んじゃったんだ。
それはもう六回目の定時放送。ルールで言うと多分最後の放送……なのかな。
見せしめでザジさんから始まりもう何人この名前を呼ばれたくない放送に呼ばれたのかな?
……もう何度も聞いてるから心が痛まない。……違う。心がもう…死んじゃった?
私は一体……どうしたんだろう。
何か体が、他人のものみたいな違和感。
「……ゆーな…亜子…」
ゆっくりと目を瞑り手を合わせる桜子を私はその様子をじっと見てたんだ。
パン
時間が止まったようだった。
―――それは他の人から見たらほんの数秒の出来事。
だけど私からすればとても長いものだった。桜子は走馬灯…?
多分その一瞬が人生の決算。私以上に長く苦しい時間を体感したのかもしれない。
私の横で倒れている桜子の頭からは―――白い煙が上がっていた。
見慣れた光景。言葉が見つからない、親しく付き合って先ほどまで、笑顔を零していたものの死。
今までに見慣れたはずだったのに、私はやっぱり…耐えられなかった。
ガサッと音が聞こえるのが気付く。
どうしてという気持ちより先に私は銃を草陰のほうへ向けていた。
私が引き金をひくと同時に放送は聞こえた。
『残り生存者二名…出席番号7番、柿崎美砂、出席番号11番釘宮円。』
兵士は気付いていない。私が一枚の紙切れを持っていることに。
紙切れはしおりの隅を破ったもので、傍から見たらただのゴミにしか見えないはず。
だけど私には凄く価値のあるものだった。
『最後の生存者さんへ
この紙を読んでるのは誰なのかな?私なのかな?……まぁそれはないか。
一言言いたい。私はあなたを恨んでなんかいない。あなたは後悔なんかしなくてもいい。深く考えないで欲しい。
貰った命を大切にして……それで、今までどおりの明るい人になってください。 柿崎美砂』
私はこの手紙の真意がわからなかった。
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「釘宮さ〜ん?そろそろカウンセリングの時間ですよ?」
景色が元に戻った。だけどこの景色は美砂や桜子が死んだあの時やゲームが終わった後でもない。
あれから五年が経った。
私は精神科で治療を続けていくうちに色々な事がわかった。
まずバトルロワイアルが世間一般に公開され、正式な法律になったという事。
そしてそれによってバトルロワイアルが完全な娯楽として世間一般に公開されて、殺し合いのデータも公開された。
今までのゲームの経歴、犠牲者、配給武器……
私は自分達が戦った『第一回』と書かれた表示を読んだ。
そこで初めて美砂の支給武器が―――モデルガンという事に気がついた。
美砂は全部気付いていたのかもしれない。私よりも、私の事を知っていたのかもしれない。
美砂は私に殺されて私が生き残るということを――悟っていたのかもしれない。
最後に生き残ったのが二人になったら、狂っちゃった私が殺してしまう。そう、私の心はすでに壊れていたこと。
狂った私に殺される、仮に正気だとしても美砂のためなら私は自殺してしまう。
そんなのが嫌だったのかもしれない。
自殺を考えた、すぐにみんなのところに行きたかった。
だけどそう思うたびに私は紙を開いた。過去を思い出し、支えにしていた。
美砂の思いを私は無駄にはしたくはなかった。それに犠牲にしてしまった桜子、他のみんなも。
「私のために正気で殺させてくれたのかな、美砂………」
答えを問いかけても大きく広がる海は波音を聞かすだけで答えなど帰ってきやしない。
そんな一方通行の会話。
少し俯いているとナースさんが心配そうに話しかけてくる。
「どうかしましたか?……具合でも悪いのですか?」
「いっ、いえ、何でもありませんっ!」
慌てて私は返事を返すと、仕事が忙しいのかナースさんは早々に病院のほうに行ってしまった。
丘には私一人だけが残る。
「(貰った命は大切にして………か。)」
「美砂っ……その言葉には……甘えさせてもらうよ。」
握っていた紙はスルリと落ち、風に舞って海の方へ飛んでいく。役目が終わったかのように。
その様子を見送った後、円は静かに病院の方向へと戻って行った。
「いくら重くても………どんなに辛くても…償って見せるよ、絶対。」
突然彼女達に襲い掛かった悲劇。
――脱出なんてそんな都合のいい事なんておきはしない。
彼女達はただ運が悪かったといわざるを得なかったのだ。
バトルロワイアル――それは最悪の娯楽。 完
P.S.三十分で書いたら意味不明ww駄文垂れ流しスマソw
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