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短編No61 顔剥ぎロワ-友情編-

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2007/04/06(金) 19:23:41
ネギま! バトルロワイヤル


さんさんと照りつける太陽の下を二人の少女が歩いている。
互いに会話を交えることもなく、ひたすら北へ進む一つの“タッグ”。
行動指針はあるが、相手の感情が読み取れない。

長谷川千雨は、イラついていた。
(喋らねーのは元からだが、こんなに不気味な雰囲気を出されちまうとな……ちゃんと予定どおりやってくれんのか……?)
パートナーと組んで殺し合いをしろと命令されたとき、千雨が最初に恐怖を感じたこと。
それは死への恐怖ではなく、相手との意思疎通の問題。

麻帆良祭から「こっち」の世界に足を踏み入れた彼女はいわば新参だ。
そして他のクラスメイトと違って友好的な態度をとらなかった。
ネット限定とはいえ普段からスタンドプレイに慣れている人間には馴れ合いは困難なことだった。
そんな人間がタッグという相手との連携プレーで是非が決まる行為をさせられることは……もはや地獄に等しい。

悔いるつもりはない。これは自業自得。
それは彼女自身が一番よくわかっていること。誰と組んでも足を引っ張ってしまうことはわかりきっている。
だから彼女は……パートナーに最も差しさわりの無い人物を選んだのである。
「あの小屋についたらひとまず休憩して……計画をねるぞ。いいか? ザジ」

顔に化粧を施した少女――ザジ・レイニーデイはコクコクと頷く。
喋りもしなければ表情も変わらない。ただ相手の指示に従うだけ……まるでマリオネットのような少女。
思う存分自分本位に動けるのだから、千雨にとってこれほど好都合な相手はいない。
相手の深層心理まで読み取る必要のない人間との行動。
よけいなトラブルをさけるための最適な決断
タッグというのには程遠いが、充分自分の立場をわきまえた結果だ。
そう、わきまえているつもりだった――――。
「ニーハオ、“イリュージョンズ”のお二人サン。ご機嫌いかがかナ?」



千雨の目の前に現れたのは自称、火星娘の超鈴音。
その名のとおり超がつくほどの天才……完璧超人である。
そして驚くべき事実は彼女がネギ・スプリングフィールドの子孫――いわば未来人であること。
麻帆良祭で垣間見たハッキング技術は自分がどうあがいても届かない領域だった。
あの電子の海の戦いはまるで遊ばれているような気分だったと彼女は判断している。

何とも形容しがたい空気を持つ彼女に気おされたのか、ザジは千雨の背中に体をぴったりと近づける。
「わわ、バカくっつくな……!」
無表情で大胆な行動をするザジに焦る千雨。その様子はまるで恋人のようで、超は思わずニヤニヤする。
当の千雨はというと、冷やかしの視線を感じ顔を真っ赤にし、次第に青ざめるのであった。
「チッ……気分はあまりよくねーな……しかしここでアンタに出会っちまうとはな」
「これも何かの縁ネ」
「そうか。じゃああばよ」
一瞬の隙をつき千雨は超に小さな塊を投げる。すると塊はみるみる光を発してゆく。
千雨の支給品である閃光弾が炸裂したのだ。

「ハァ、ハァ……冗談じゃねー! すました顔しやがって……憎たらしいったらありゃしねぇーよ」
二人の少女は小屋を目指して走る。千雨はザジのサインによって超を危険と判断したのだ。
そのサインとは背中文字。ザジは千雨に寄り添うフリをして一文字ずつ丁寧に書き込んだのだ。
そしてそのメッセージは……「ち の に お い 」。
つまりザジは超から血の臭いを感じ取ったのである。千雨はそれゆえに青ざめたのだ。
見たところ超は怪我一つしていないのだから。
一体血の臭いは誰のものなのか。

「良し!小屋の入り口だ。ひとまず隠れ……」
「グロロロ〜」
答えは当然、被害者の血だろう。


小屋の扉の前には、一人のクラスメイトが立っている。
名は四葉五月。超に煽られ同盟を結んだ料理人である。
「よ……四葉!」
「グロロ〜長谷川さん、もう逃げられませんよ。あなたの顔を剥がさせてください〜ッ」
「かッ……顔を剥ぐ!? 何言ってんだ!!」
「まさにそのままの意味ヨ」

千雨が振り向くと、そこには既に超がいた。
「ちょ……おま、どうやって追いついた!? 」
「私を誰だと思っているかネ?かつて100枚近くの覆面を他人から奪い取りコレクションしていた完璧超人ヨ?
わかりやすく説明しようカ? 千雨サンはそこの小屋でパソコンによるハッキングをするつもりだった。
そして首輪に仕込まれた爆破装置を解除し……このゲームを台無しにしようと計画していたのではないのかネ?」
「それだけの憶測かよ……小屋にパソコンがあるかどうかもわかんねーのに」
「悪いがずっと追けさせてもらったヨ。この首輪探知機で。
アナタ達の進む道のりと地図を照らし合わせれば、行き先は大体察しがつく。
仮にパソコンがなかったとしても……急な対応をせまられると人は予定通りにしか行動できないものネ」
「じゃあ四葉に先回りさせといて……頃合いをみてワザと話かけたのか」
「そうネ。お二人にも私のコレクションになってもらうヨ? こんな風に!」

超はバッグから血がついた物体を二つ取り出す。
それはまぎれもなく、人の顔の皮膚を剥いだものだった。
「うっ……」
「……」
千雨は吐き気に催され、思わず手を押さえるが、ザジはいつものように無表情のままであった。
「桜咲刹那に龍宮真名……名うての強豪超人の顔をコレクションするのは気持ちが良くてたまらないネ〜ッ」
「テメェ……正気かよ!」
「私は大真面目ネ。クラス全員の顔を頂くつもりダガ?……さ、もう茶番は終わり。おとなしく死んでもらおうかネ」

千雨の全身は恐怖で震えていた。
(首輪探知機を向こうが持っている限り……あたしたちは絶対逃げ切れねー)
殺し合いを打破するために自分が企画した作戦も、もはやこれまで。
体力でも知力でも上回る人物が相手なのだから、それは仕方のないこと。
「さあ、その顔を頂こうかネ。サツキ! 」
超の合図で五月は右腕をあげ、また超自身も自分の左腕をゆっくりと掲げる。
すると二人が掲げた片腕を繋ぐように光が流れ、橋のように繋がった。
当然その沿線上には千雨たちもいる。
「これが我らの新機軸! オプティカルファイバー!!」
歯車が軋むような騒音が響き、光はより輝きは増していく。
そのまばゆさに息を飲むと、千雨は目を閉じた。
「いくよ五月! クロスボンバー!!」
「グロッガァ〜! 」
引き寄せあうように、超と五月は千雨たちが飛び込んでくる。
今千雨が最も恐れていることは、超による顔剥ぎだった。
自分の顔が刹那や龍宮のように体から離れること……とても耐えられそうにない。
一人の女として、もうこの世では生きていけないと確信する。
(ハハ……どうせ殺されるってーのに何考えてんだあたしは)
あまりの虚しさで、心が空っぽになってゆく。
自然と涙が零れ落ちていた。
しかし……どうしたことであろうか。
超たちがすぐ側まで接近していたはずなのに、いつまでたっても何も起きない。
おそるおそる目を開けてみると、信じられないことが起こっていた。
「殺しちゃダメ……」

突然のことに超は肝を冷やした。
ちらりと首筋に目をやる。刃物のように鋭利な物体が密着している。
それはよくよく見れば、物ではなく『人』の一部――ザジ・レイニーデイの手であった。
指は一本一本先まで針のように伸びており、見たところ硬さもある。
おそらく金属レベルの硬度は持ち合わせているだろう。
(危うく串刺しになるところだったネ……!)
クロス・ボンバーはラリアットで相手の首を挟む二人がかりの必殺技。
ゆえに技をかける側が共に相手へ接近しないと成立しない。
五月の首筋にも同様に、ザジは手『だった』ものをあてている。
もう少しで死ぬのは自分たちのほうだったのだ。
「ザジ……一体なんなんだそりゃ!? お前も魔法使いなのかよ!?」
どうやら千雨もパートナーの奥の手を知らなかったらしい。
それは当然といえば当然。
知っていたならば、あそこで諦めるような態度はとらなかっただろう。
「玉乗りの如くに体軽やかに……」
千雨の問いに答えるように、ザジはぶつぶつと独り言を話し始める。
ゆっくりと、静かに、この場にいる全員に聞こえるように。
「腕を弓の如くに引き、空中ブランコの如くに振り下ろす……その時、手刀筋骨”壮”となる」
その壮拳もってテント擦れば……炎立つ……」
ザジの言葉に聞き入ってると、超は首筋が熱くなるのを感じた。
ふと視線を下にやると、ザジの手が熱された鉄板のように赤くなっていた。
まさか、と悪い予感が走った超は慌ててその場を離れようとするが時既に遅し。
「……観客席に深く入り……肉斬り骨断てば……サーカスに赤い雨が降る!! 」
「五月! 早く逃げるネ! 」
真っ赤に染まるザジの両手から紅蓮の炎が吹き出して、超たちに襲いかかる!
その炎は勢いを留まることを知らず――


「す……凄ェ……」
千雨は目の前で起こっていることに対し、素直に感想に述べた。
パートナーが炎を帯びた両手、いや両手刀の使い手である事実。
ただのピエロにしては何か裏があるとふんでいたが、これは一体何なのであろうか。
トリック? 魔法? 体術? 気?
まるで安っぽいファンタジーに登場する魔物が扱うような事象……常識では捕らえられない。
それは超たちも同じなのだろうか。
吹き出した炎を恐れ後退したものの、庇った手からは煙が出ている。
あの様子だと肉体にはダメージが届いてはいないだろう。しかし威力は折り紙つきのようだ。
「チサメ……逃げて」
「じょ、冗談じゃねえ。お前一人でこいつらに敵うのかよ!? 」
ザジから撤退の要請が入るが、千雨は素直にハイとは言えない。
本当に逃げれるのなら今すぐにでも逃げ出したい。ただ、超たちがそれを許してくれるはずがないと思ったからだ。
「私も賛成だヨ。千雨サン、もうこれはあなたがどうこうできるレベルを越えている」
しかし予想は斜め上。超はあっさりと逃亡を許可した。
「ザジサンのその両手……“サーカスの赤い雨”を出されてはこちらも本気を出さざるえない」
「さ……サーカスの赤い雨!?」
「ただの人間であるアナタには知る必要のないことヨ……さっさと立ち去るがいい」
「ああそうかい。てめーらで勝手にやってろ!」
捨て台詞を吐いてあさっての方向へ走り出す。
超の侮蔑の目に千雨は歯がゆく感じる。彼女の興味はザジのみになってしまったらしい。
「言われなくとも勝手にやらせてもらうヨ」
千雨は情けない気持ちでいっぱいだった。
自分は今、決して届くことのない領域から凡人として逃げているのだと。
「――だから少々アナタにも痛い目を見てもらうネ」
「え? 」


超の言葉に千雨は視線を後方に戻す。
目と鼻の先にあるのはいつのまにか跳躍して、自分に近付いてきた超の……右足。
「マスク・ジ・エンドー!!」
その右足は眼鏡を突き破り、硝子の破片とともに襲い掛かる。
眼鏡の破片は眼球に突き刺さり、蹴りの衝撃は破片を更に奥へと押し込む。
皮膚は破れ、果物が潰れるような音が脳髄で響き、血と何かが混濁した液体が、中で溢れていく。
自分は己の本分を全うすることも出来ず……相手の本分も損なうのだろうか。
視界が薄っすらとしていくなかで、千雨はまた後悔するのであった。
「目がァ!目がァーッ!」
千雨は目を押さえて座り込む。
「立ち去るのは許可したが逃がすとは誰も言ってない……ヘイはキドウなり、ネ」
「ウォ〜〜ッウロア〜〜ッ……く……卑怯だ……ぞ……」
「もう喋らなくていいヨ。急に小物臭が出てきた……ム!」
突き刺さるような殺気。木霊する風切り音。何かが飛んでくる。
踵を返し腕を手首の所で交差させる。交差した腕の杯に盛られるような形でそれは乗った。
「“必殺!回転サーカスの赤い雨”といったところか……危なかったネ」
超の両腕で動きを止められたのは、空中で回転しながら突撃してきたザジであった。
ザジは回転の遠心力を使ってサーカスの赤い雨の威力を上げ、超に奇襲したのだ。
「いくら燃える手刀が襲い掛かってこようと……手首から下は何も変わっていない。
腕の動きを止めて、炎に気をつけてしまえば大した脅威ではないヨ」
そのまま腕を振り上げてザジを投げ飛ばす。ザジは姿勢をとってゆるやかに着地した。
ザジを見つめている内に、フッと笑みがこぼれてしまう。
超は彼女の心の隙を突いてみようと画策する。


「さて……ここで一つ実験をしてみようと思うネ。ザジさん、私たちは今から千雨さんの顔を剥ぎ取るネ」
「……! 」
超に対する怒りがザジの無表情なマスクから滲み出る。
「さっきアナタたちにした時と全く同じように……私たちのフェイバリット技、クロス・ボンバーで。
もちろん威力もスピードも角度もほぼ同じ様にするヨ。私たちを止めるも止めないも自由……アナタ次第。
ほっといても千雨サンの顔がペリリと剥がれるだけだしネ。
正し、止めに入ろうとしても……間に合うかどうかは私にもわからないヨ。
例えさっきのクロス・ボンバーのタイミングをちゃんと覚えていたとしてもネ。
ザジさんが今いるその距離じゃ……千雨さんのところに飛び込むのがやってではないかナ?」
「ザジ!来るんじゃない ! 罠だ! アタシとお前をいっぺんに仕留める為の罠に決まってる! 」
見当違いの方向に向かって千雨は叫んでいる。もはや視力は完全に潰れているようだ。
「別に罠でも何でもないガ? 私たちはあくまでやろうとした事を口にしただけよ。
千雨サンも好きな様に動いて私たちから逃げればいい。しかし私たちの攻撃から逃げ切れる算段はあるのかナ?
逃げたら助けに来た『別の人』が餌食になるんじゃないかナ?」
「さぁ〜て記念すべき三枚目のマスク剥奪式の始まりネ! 五月!」
「グロロロローッ」
千雨を貫くように再び光の橋が出来上がり、五月と超が獲物に向かって突撃する。
「「クロス・ボンバー! 」」

儀式は、滞りなく行われた――


「チィッ……『邪魔立て』しやがって〜〜ッ!」
超の叫びが聞こえてくる。
千雨は目こそ見えないが、その言葉がどういう意味を指すか理解するのには充分だった。
技が炸裂する瞬間、自分を突き飛ばした影。
従って……自分の代わりに餌食となったのは一人のピエロしかいない。

「ザ……ザジお前……馬鹿野郎……! 」
「全くその通りヨ。最後だから千雨サンにも教えてあげるが、ザジサンはその筋では知らぬ者無しと謳われた悪魔超人。
『自分以外を信じるな』『疑え裏切れ例え仲間であっても』と徹底的に叩き込まれていたヨ。
それがこんな悪魔超人にあるまじき行動をして……本当に突っ込んでくるとは……どうなってしまったネ……」
「グロロロァ〜いつのまにか3―Aの馴れ合いクラスメイトの、変なクセが染ってしまったようですね」
「私の身代わりなんかに……私と組んだばかりに!」
「その通り……」
獲物のピエロがゆっくりと口を開く。
千雨は彼女の愚痴の聞こえる方へ耳をやる。
「チサメとは金輪際……組まない……」
「ザ……ジ……」
千雨はまた後悔する。
自分が息の合う仲として選ばなかったように、彼女もまた自分とのタッグは不本意だったのだ。
千雨は最後の最後まで足を引っ張った上にまるでダメだった自分を、呪っても呪い切れなかった。



「ウソダヨ……」
「……え? 」
「また一緒に……タッグ組みたい……こ……今度は真のトモダチ同士として」
ザジは、笑っていた。
滅多なことでは表情を崩さない彼女が満面の笑みを出していた。
それは営業スマイルなどでは決してなく……屈託のない顔つき。
後悔を微塵も感じさせない純朴の笑顔だった。
「ま……また私と組んでくれるのか? 」
「……ン……ウグググゥーッ!!」
だがザジは友の呼びかけに応じることなかった。
超と五月のラリアットに挟まれた彼女の笑顔は……クロスボンバーの衝撃で次第に変色してゆく。
そして血を吹き出しながら、化粧が施された顔面の皮膚は剥がれるのであった。

ベリベリ、ベリベリと。

「グフフフ……3−Aの巨星ここにひとつ墜つ……カ。これで私のコレクションがまたひとつ増えるネ」
「ザ……ザジ……ウワアアア〜〜ッ!!!」
千雨は叫んだ。
道化として散った真の友に。
決して甦ることのない真の友の想いに。
 

    [管理人の短編一言感想集] その61
    顔剥ぎロワシリーズの短編。
    千雨は短編でも友情話が多いね。・・・あと、五月強すぎw
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
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