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短編No40 危険な双子

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2006/06/06(火) 00:59:55
ネギま! バトルロワイヤル


明るさと温かみを齎す太陽も山の向かいへと沈み込み、
その後を追うかのように冷たい闇が上空を侵食中である初秋の宵。
孤島の北側に群生する雑木林を重い足取りでさ迷い歩く少女、佐々木まき絵は
数メートル先も定かに見えない暗黒と昆虫の一匹も羽音を立てない静寂にかつて無い不安を感じつつ、
さらに不覚にも陥ってしまったこの迷子状態が一層の不安を煽りつつ、
まあそんな感じでびくびく怯えていたものだから、
真っ赤に染まったシャツを体に貼り付けて無残に転がっている鳴滝風香が視界に入った瞬間にはもう
どっか近くの外国からでも聞こえるんじゃないかと思えるくらいの声量で悲鳴を響かせていた。

まき絵は甲高い叫び声を上げながら尻餅をついてしまう。
クラスメイトの死体に出くわしても平常心を保てるほどの肝は持ち合わせておらず、
それに加え腰まで抜かしてしまった結果なのだったが、
それはつまり立ち上がれない動けない逃げられないということであり、
一刻も早くこの恐ろしい場から離れたいのにそれができないという恨めしい状況は
軽い拷問に匹敵するんじゃないかと思えたくらいだった。

しかし実際にそれは拷問、いや、それすらも通り越した処刑であるのだと身をもって体験することになる。


「なんだ怖くて動けなくなっちゃっとか? それじゃつまんないじゃん」
声がした。
そいつはクヒヒと子悪魔のような笑みをまき絵に投げかけている。
「……ぇ?」



残念ながらまき絵の頭ではこの状況を理解するに至らなかったのだが、
まき絵に限らず誰しもがこの不思議に困惑すること必死であろう。
何しろ死んでいるはずの、死んでいると思っていた風香こそがその声の主であったのだ。
当のまき絵は数秒間の絶句と混乱と放心の後、なんとか風香が生きているという所までは理解し終えたのだが、
それでも全てを理解するには情報と脳の容量が足り無すぎた。
そして腰は抜けたまま。
もう1つおまけにまき絵の支給武器は手動の鉛筆削りのみなので丸腰同然である。
なんかヤバい、って気はした。

パン

言ってるそばから。

しかしこれも理解し難い銃声と負傷であった。
なぜなら?
見たところ風香は拳銃など所持しておらず引き金を引くモーションだって微塵も見えなかった、
ただ乾いた落ち葉を下にして寝転がっているだけに徹していたからだ。
ではなぜまき絵の太ももにぽっかり穴が開いているのか。
その答えは出来たてほやほやの銃創からどろりと溢れ出る流血とともに現れた。

「やった、当たったですぅー」
そんなことを言いながら嬉々として頭上の広葉樹を降りてきたのは、ああ、なるほど。
鳴滝史伽のお出まし。
流石のバカピンクでもここまでくれば察しの着くものであり、大体を想像することができた。


「何言ってんだよ外れだよ外れ。
 頭に一発で仕留める予定だったのに、まき絵じゃなきゃ今頃逃げられてるぞ」
「うぅ〜、だってこれ難しいもん……
 だから私は死体役やりたいって言ったのに、おねえちゃんが無理にさせるからいけないんですッ」
まき絵そっちのけで談笑する発育不良の双子達、その一方は片手に黒い拳銃を提げ、
もう一方はたった今起き上がってポケットから銀色の拳銃を抜き出している最中である。
「だって死体役は危ないんだよ?
 史伽はお世辞にも演技が上手いとはいえないし、万が一バレた時のことも考慮したボクの優しさだと思って欲しいね。」
「うッ、そ それは…そうですけど……むむむぅ」
さて、この和やかな雰囲気はなんだろうか。
行動とのギャップが凄まじい、銃口を突きつけながらするような会話の調子ではないだろう。

そうこうしている内に風香は安全装置を外し終え、二人揃って仲良く動けないまき絵の許へと歩み寄っていた。
2人は不気味にも歩幅も歩調もぴったりでおまけに背格好も酷似しているものだから
クローン人間の来襲なんかを想像させるが、如何せん迫力に欠けていた。
手にする拳銃は紛れも無い本物だあるのだが悪戯っ子の2人が持つとどうも玩具のように思えてしまい、
それが本当に人を殺す能力を有する物だと実感した時にはもう遅すぎた。

「いくよ?」
「「せーのッ」」


以上
  
 

    [管理人の短編一言感想集] その40
    まき絵が見た危険な双子。
    BRの乗った双子だったら、こんな場面もありうるかも・・・。
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
    お問い合わせはyuyu_negirowa@yahoo.co.jpまでお願いします。
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