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短編No34 まき絵の生きる道

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2006/05/12(金) 01:38:25
ネギま! バトルロワイヤル


崖の中腹で佐々木まき絵は一歩も動けず途方に暮れていた。
空は昼なのに真っ暗で大雨。
まるでこんなに哀れに堕ちるまで堕ちた自分に対して空が泣いてくれるように…
まき絵は思い返す、どうしてこうなったのか。
初めに出会った美空はゲームに乗ってしまっていた。誰も殺しなんかしたくない、みんなそう思ってる。
こんなゲームを何とかして助けてくれると思っていた、だが無常にも美空は自分に襲い掛かった。

結果、油断していたまき絵はフォークだけの相手にかなりの手負いを負わされた。
意を決し鞄から包丁を取り出して美空に向けた、美空は
「やれるものならやってみろ!」
と挑発してきた。
まき絵はただおどしのつもりだった。これで逃げてくれれば少なくとも人は殺さなくて済むと思ったから。
だが美空はそんなまき絵を罵倒し、フォークを首に突き立てた。
まき絵の頭は真っ白になる。殺されると思ったから。
死にたくない、死にたくない、死にたくない、生き残りたい、生き残りたい、生き残りたい。
次の瞬間、美空の腹に鋭利な刃先が恐ろしいほどあっさりと沈んだ。
美空は少しの間うめき声を上げたがやがてその反応もなくなった。
「う、うわああああああああぁぁぁぁぁ…」
恐怖から声を出して走った。
殺す気なんてなかった。本当になかった。
―ただ死にたくなかった。それだけだった。

すると近くにいたのどかと夕映がその瞬間を見ていた。
「まき絵さん…あなた、何ということを」
「違う!私は…」
「のどか離れるです!この人はもうゲームに乗ってるです!!」
違う、乗ってなんかいない。死にたくないから…殺されると思ったから…だから…
銃を取り出した夕映はまき絵を牽制する。



どうしてこうなるの…私は死にたくないだけなのに…
「うわあああああああああああああ!!」
大声を出して夕映に突進して銃を奪ってその小さな体の中心に口径をめり込ませ引き金を引いた。
「ゆ、夕映ー!」
「はー…はー……」
ゆっくりとのどかを見る。
「ひぃ」
怯えたのどかをいとも簡単に殺した。なぁんだ、結構簡単なんだ…

…今、自分は何を考えた。夕映をのどかを何故殺した、夕映は説明がつく。
だがのどかはどうだ、彼女は怯えて動けなかったのに何故殺した。
何故?答えは簡単、まき絵は狂ってしまったから。
「のどか!夕映!」
するとハルナがこちらを睨んでいた。
また見られた。死にたくない、死にたくない。
「うわあああああああああ!!!」
今度はハルナに襲い掛かった。だが今度ばかりはそううまくいかなかった。
焦って無駄弾を撃って弾切れになり、弾の交換中を狙われてバットで殴られた。
そのまま背中を向けて逃げ出したが下り坂で足を滑らせ崖下に落下してしまった。


「…痛ぁい」
足が折れたみたいで右足の自由が利かない。体中痛くて動きたくない。
そんなときに放送があった。
綾瀬夕映、春日美空、宮崎のどか、すべて私が手を下した相手だ。
そして禁止エリアの発表で驚愕した、あと少しで自分の居るここが次の禁止エリアになるのだ。
痛む体を引きずって崖を上る。下は流れの急な川、この足では間違いなく溺れ死んでしまう。
上の森に行くしか道はなかった。



「うぅぅ…」
必死に崖を登るまき絵。両手と左足で必死に上った。
残り時間はあとわずか。
「死にたくないよぉ…死にたくないよぉ…」
途中から泣きながら上った。雨のせいで何度も滑り落ちそうになるが必死に耐えた。
爪が割れ、泥まみれになりながらも上るが途中で動かなくなった。
体力の限界だった。
上を見上げる、誰か居た。助かると思った。
だがそれは先ほど追いかけてきたハルナである。ハルナは傷だらけのまき絵をただ見下ろしているだけだった。
「…てぇ…助けてぇ!お願いだから助けて!」
声を出して叫んだ。
だがハルナは何も答えない、親友の仇など助ける気にもならなかった。
ピッピッピ
「!!」
首輪が鳴り出す。もうすぐ爆発する。
「い、嫌ぁ!助けてよ!助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
どんなに泣き叫んでも、どんなに命乞いをしても…ハルナはその場から動かず、睨んだままだった。
何とか手を伸ばそうとして手を離した時にぬかるんだ地面で滑り、また落下する。

一瞬の無重力体験。
徐々にハルナの姿が見えなくなっていく。
「何で…な゛んでごうなるの゛ぉ……」
涙声のまき絵は誰かにいうわけでもなく呟いた。
「わ゛たし゛はただ……しにたくないだけなのに……」

川に落下した瞬間に大爆発が起こる。
生きたいと願っていたまき絵にとって、それはあまりにも悲しい結末であった。



  
 

    [管理人の短編一言感想集] その34
    マーダーになるべくしてなってしまったまき絵。
    生きるために行った行動が自らの死を招く結果になってしまうとは・・・。
    BRの過酷さをあらわした短編。
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
    お問い合わせはyuyu_negirowa@yahoo.co.jpまでお願いします。
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