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短編No20 「生きて……」

 
作者:マロン名無しさん
掲載日時:2006/01/06(金) 02:09:32
ネギま! バトルロワイヤル


殺されかけたから殺した
親友が襲われていたから殺した
自分が死なないため、円を守るため
でもそれは悪いことだったの?正当防衛だからって、許されるの?

違う……よね
みんなだって必死だったんだよね、生きようとして
ゲームだから、ルールだからじゃない
誰も命は大切だから
絶対、殺し合いなんてしたくなかった、そんなの当たり前じゃん!
それは……私もだけど……それでも……
それでも私は……人殺し

桜子……みんな……
死んだらもう一度、会えるかな
その時は……許してくれる?
……ううん、許してくれなくてもいい
ただ、私は、謝りたい
ごめんねって……それだけでいいから……

腕時計と放送の時刻は一秒のずれも無かった
だから今ちょうど11時半、死ぬまであと30分……

柿崎美砂と釘宮円は水平線の見える丘の頂上、一本の大木に寄り座り
手を伸ばせばすくい取れそうなほど澄んだ星空を眺めていた
一日と半日前、円が襲われていたところに美砂が現れその場をしのぎ
初めて安堵を得た二人は椎名桜子を探しに島中を歩いた
途中雪広あやかを見かけたが何か(誰か?)に発砲していたので急いで逃げ
その後誰にも会わず、放送で桜子の死を聴き泣き崩れた
そして5時間前、美砂と円以外全員の死亡が告げられた
おそらく同士討ちで死んだのだろう
二人は当然殺しあうことなどできず、なすすべなく時間は過ぎた

美砂は円の手を握り続けていた
死ぬのは怖い
死にたくない
しかし身動きもできずただ死を待つことしかできない二人にとって
親友の存在は大きく、恐怖の中でも心が安らいだ
繋がれた手は恐怖に立ち向かう支えでもあり
また、二人の死に対する覚悟も示していた
この手は決して離さない、そう誓った

もう話すことも無くなった
内にある全ては話しつくした
みんなのこと……学校のこと……家族のこと……将来のこと……
思い出……このゲームのこと……人を殺したこと……
親友への、想い
言葉にする度涙があふれてきて
辛くなって
生きたいって思って
でも、こうして美砂の手を握りながら死を迎えられるのは
なんだか嬉しくて
それは、美砂も同じ気持ちなんだってのが伝わってくる

だから……余計に……辛くなる

美砂を……裏切ることが

あと1分……
もうそろそろ……お別れか……

「ねえ美砂」
「なあに」
「美砂と親友でよかった」
「……私も」
美砂の手を、強く、握り締める

「死ぬまで、この手は話さないから」
「うん……二人で一緒に……ね」
「……」

ポケットから小さめの銃を取り出す

「美砂……ずっと一緒に……いたかった」
「…?」
「できるだけ長く、美砂と一緒にいたかったの」

あと30秒……
もう限界……ね

引き金に指をかける
手が震える

「二人で一緒に死ぬって言ったけど……やっぱ無理
 できないよ……」

こめかみに銃をあてる
美砂はそれが何なのか気づいてない
知らずのうちにまた涙が流れる

「ごめんね美砂……ごめんね……さよなら」

指に力をこめる

「生きて……」


少女は叫んだ
親友の名を
自分を生かすために、自ら犠牲となった親友の名を
親友の目は開かない
綺麗な死に顔には血が流れている
胸に顔をうずめ、泣き叫ぶ
もはや名前に聞こえない、悲痛の叫び
それでも少女はただ叫び続けた

私にどうしろって言うの
死の覚悟はした
それは二人でいれたから
なのに私だけ生かされて
何ができる?
もうあなたはいないのに
桜子も、みんなもいないのに
一人なのに
なんで私だけ残すのよ
みんながいないと……私は……弱いのに
こんなに……悲しいのに
……辛いのに
誰もそばにいてくれないじゃない!
なんでよ!!
二人で一緒にって……言ったのに……っ!!

…………ばかぁ

こみ上げてくる全てを叫びに変えて吐き出す
その想いは透明な星空へむなしく消えていった

ババババババババババ

優勝者を迎えにヘリコプターで向かう
少し遠いが平らな地で着陸準備に入る
トランシーバーにノイズが入り、
「あー、命令の変更だ
 遺体の回収作業に移れ、以上」
丘を登る
一本だけ目立って大きな木
そこに優勝者はいた
左胸に血を流しながら
二人の少女は重なり合うようにして息を引き取っていた
その手を固く繋いだまま
  
 

    [管理人の短編一言感想集] その20
    短編No11「ありがとう」の続編?少し話がリンクしている気がする。
    作者は定かではないが、円の心の葛藤が表現できていてGJ!
    by 別館まとめ管理人(YUYU)
    お問い合わせはyuyu_negirowa@yahoo.co.jpまでお願いします。
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