トップページ > こちら麻帆良学園麻帆良図書館深層部

こちら麻帆良学園麻帆良図書館深層部


  • トップページ
  • 前へ
  • 次へ
こちら麻帆良学園麻帆良図書館深層部

短編No130 短編ですら葉加瀬は生きる事を許されない 

作者:ケータイまとめ
掲載日時:2008/06/14(土) 04:40:13


こちら麻帆良学園麻帆良図書館深層部
「なるほど……これは……」

ノートパソコン――何本ものケーブルが伸び、うち何本かは五月の遺品となってしまった忌むべき“首輪(首が切断されたにもかかわらず、無傷)”に繋がっている――の画面に向かったまま、ハカセが呟く。

「ど……どうなん……?」
「……大丈夫です、少し時間を頂ければこの首輪を外せます!」

それを聞いた瞬間、見守っていた朝倉と亜子は、手を挙げて喜んだ。

「やったぁ!」
「これで脱出できるね! さすがハカセ!」

そして、まだ画面に向かったままハカセは続ける。

「では、仕上げに入ります。集中したいので、一人にしていただけますか?」
「せっせやな――」
「うん、ここはハカセに任せよう」

そして、二人は部屋の外へと退出した。


「――――――」

震えている

「私が――私がやらなきゃ――」

ハカセの手が

「決めたんだ――これしかないって――――」

彼女は震える手で、一般人は使わないであろうよくわからない工具を握り

「チャオ――」

それを、自らの“首輪”に持っていく

「五月さん――」

数回動かすだけで“首輪”のカバーが外れ、内部の回路が見える

「古さん――」

そのまま工具を床に置き、“これから行うこと”に備え、パソコンから少し離れる。その時、マウスの横に置いてあった平たいケーブルを握る

「茶々丸――」

そして壁にもたれて座りこみ

「今――私も――」

握ったケーブルの端子を

「そっそ、“そっち”に――」

自分の“首輪”の、剥き出しの回路に





「まだかなぁ?」
「焦っちゃ駄目だよ」
「うん、せやね」



「うう――ううっ――」

ハカセは、静かに泣いていた

「ぐ――ひう――っ――」

ケーブルを握る両手はかなりの振り幅で震え、回路まで残り約3センチの位置で停滞している

「わっわたっわたっわたっしっが――」

鳴咽を漏らし、視界が様々な要素で歪む

「わたしっがっやらなきゃっわたしがっ!」

そして

「――っ――――――――――!」



朝倉と亜子の耳に、何かが炸裂する轟音が聞こえた。

「え!?」
「今の……ハカセ!?」

二人は、全速でさっきまでいた部屋に駆け込む。そして扉を開けた二人の目に入ったのは……、

「うそ……」
「い……いやああああああああああ!」

下顎の辺りから組織が大きく吹き飛び、辺り一面に血を撒き散らすハカセの死体であった。

「ハカセ――どうして――」
「いやああああ! ハカセぇぇぇぇ!」

ふと、二人は首に新しい違和感――正確には開放感――を感じる

「あれ、首輪が……」
「と……取れ……とる…………」


自分達をさんざん苦しめてきたそれは、足元に落ちていた。

「何で……何でウチらは無事でハカセが……」
「――――」

朝倉は何かを思いつき、まだ電源が入ったままのパソコンを見る。そこには、メモ帳にこう打たれていた。


“細かい理論を説明しても無駄だと思いますので、必要なことだけ話します。
“首輪”の解除には、どうしても“首輪”が爆発する際に出る信号を解析する必要がありました。方法は、これ以外にありません。
朝倉さん、和泉さん。私は、最期にお二人に出会えてよかった。みなさんと脱出できなくなったのは残念ですが、どうか、無事に生き残って下さい。お元気で”




「ハカセ……!」

読み終えた朝倉が、パソコンのキーボードにうなだれる。

「ハカセ……ウチらのために……」

苦手なはずの血にも構わず、亜子はハカセの亡きがらに歩みよる。

「ごめんなぁ……痛かったやろ……苦しかったやろ……」

上半分しかわからないが、それでもハカセの顔は安らかだった。


『うへぇ、今回のは得に酷いなぁ』
『見ろよこのコ、まだ小学生くらいかもしれないのに』
『初っ端に死んだからな、3日もすればそんくらいは腐るだろ』
『そういえば、優勝者は?』
『仮設病院で手術中、多分死ぬらしいぜ』
『発見した時は、全身の左半分がぐちゃぐちゃだったんだろ確か』
『“首輪”もどっかにすっ飛んでいくぐらいの衝撃だったらしいのに、よくもまぁ』
『隊長ぉー、やっぱ見つからないっす』
『朝倉和美と和泉亜子の死体か?』
『はい――』
『隊長、まさか……』
『…………一応、本部に連絡しとくか。お前らは作業にもどれ』
『了解』


Copyright (C) ネギまバトルロワイヤル別館 All Rights Reserved.
inserted by FC2 system