今、私達は殺し合いをしている。嘘でも夢でもない、紛れもない現実。逃れようのない現実……
今、あのお方はどこにいるのだろう。いつもお傍に仕えると心に決めていたのに……いったい、どちらにいらっしゃるのですか?
この地には、貴女に危害を加えようとする輩が多く居ます。早く、早く私がお傍に向かわなければ。
あの方に何かあったら私はもう生きていけない。生きていく意味がなくなってしまう。いったい、どちらにいらっしゃるのですか、お嬢様……
目の前に、武器を構えた女性がいる。その人は何かを叫びながらこちらに武器を向けている。
雨が降っているのか?よく聞き取れない。私の武器からも水滴が零れ落ちていく。
時折聞き取れるのは私の名前と、私の大切なあのお方の名前。この人はお嬢様の居場所を知っているのか?口を開こうとした……
しかし、次の瞬間耳に飛び込んできたのは“死”という単語。
その人はまだ何かを叫んでいる。私の名前、あのお方の名前、“死”……
私はその人に向けて武器を振るった。この人間は危険だ。
お嬢様の名前を呼びながら“死”という言葉を叫ぶなど……あのお方に危害を加えるつもりとしか思えない。
……
敵は沈黙した。もう、私のお嬢様の名前を呼ばなくなった。私のお嬢様に危害を加えようとすることもこれでなくなった。軽やかな鈴の音もまた、聞こえなくなった。
雨なんて降っていないのに私の剣からは水滴が零れ落ちていく。
だが、まだ一人倒しただけだ。この地にはこの女のようにお嬢様に危害を加えようとする人間が多くいるのだ。
昨日まではお嬢様の大切なご友人の一人だと思っていたが、この人でさけ狂ってしまった。お嬢様に危害を加えようとしてしまった。
早く、早くお嬢様を探さねば……
誰か、お嬢様の居場所を知らないだろうか?
そういえば、先程本部からの放送でお嬢様の名前が呼ばれていた。脳裏に、最初ルール説明の時に響いたお嬢様の悲鳴が蘇る。
まさか、お嬢様はまだ本部に捕まっているのでは……なんということだ、早く助けに行かなければ。
その為にはこの首輪を外さなければ。首輪を外す為には優勝するしかない。
一石二鳥だ。
お嬢様に危害を加えようとする全ての者を殺し、私が優勝者となって本部に捕まっているお嬢様を救い出すのだ。
お嬢様、今から向かいます。今すぐ全ての愚かな者共を殺して私が貴女の元へと馳せ参じましょう。後しばらくの辛抱です。すぐにこの刹那が貴女の元へと向かいます。
お嬢様、お嬢様、お嬢様、お嬢様、お嬢様、お嬢様、お嬢様……
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